サルも“リアルすぎる”CGは嫌い?
2009年11月4日(水)19時16分配信 ナショナルジオグラフィック
サルの感覚を調べる実験で使用された映像の抜粋。左から、「いかにもロボットのような実物と遠いCGアニメーション」、「非常にリアルな実物に近いCGアニメーション」、「実物のサルの顔」。 2009年10月に発表された研究によると、サルは“リアルなCGアニメーション”から視線をそらす傾向を示したという。自分の種族をあまりにリアルに描いたものに対しては、多くの人間と同じように、サルたちも不快な気持ちを抱くようだ。Images courtesy Asif A. Ghazanfar [ 拡大 ]
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CG映像やロボットなど、リアルすぎる作りものの人間の顔には不気味さを感じることがある。「不気味の谷現象」とは、そういった心理的なマイナス反応のことを指す。そしてこの心理的マイナス反応が、サルにも現れることが判明したという。今回の発見は脳研究の発展を促し、最終的にはこの反応が存在する理由の解明にも役立つと考えられる。
研究を行ったのは、アメリカにあるプリンストン大学の霊長類神経動物行動学研究所(Primate Neuroethology Laboratory)の研究チームで、5匹のオスのカニクイザル(Macaca fascicularis)に対して、サルの顔が動く3種類の映像をモニターで見せた。「実物のサルの顔」、「いかにもロボットのような実物と遠いCGアニメーション」、「非常にリアルな実物に近いCGアニメーション」の3つだ。
研究チームの一員でプリンストン大学に所属する心理学者アシフ・ガザンファール氏は、実験結果について次のように話す。「サルたちは、“実物”と“ニセモノらしいニセモノ”の映像に対しては目を向ける回数が多く、見つめる時間も長かった。他方、“リアルなニセモノ”の顔からは視線をそらしているようだった。科学的に実証したわけではないが、まるで“見たくない”と意思表示しているかのようだった」。
ただし、ガザンファール氏の研究チームは、今回の実験では感情の動きを追跡・記録する手法は採用していない。したがって、“リアルなニセモノ”の顔を見たとき、サルたちが本当になんらかの不安定な精神状態に陥ったのかという点については実証されていない。
それでも、サルたちが視線を送る先として“リアルなニセモノ”以外のものを選ぶことははっきりしているようだ。「このような行動は、不気味の谷現象がサルにも当てはまると考えれば説明がつく」とガザンファール氏は話す。
今回の発見はいくつかの点で重要性を持っているという。
「まず、“この現象は文化的な産物ではなく、脳に本質的に備わっているレベルの感覚である”とする仮説を支持する証拠となる」とガザンファール氏は話す。この心理的反応は、霊長類の祖先から受け継いだ進化的適応の結果である可能性がある。ただし、どのような目的に役立つ機能なのか、すぐには判然としない。
この点についてガザンファール氏は、「おそらく、進化の過程で人の顔に細心の注意を払うようになり、それに付随して生まれた単なる副作用だろう」と推測する。目に入ってきた顔が“正解”に十分近い場合、私たちの脳は、それを“人間”として分類しようとする傾向を持つ。しかし、細かい部分で微妙なズレが存在する場合は、分類がうまくできなくなる。このときの不協和が不気味の谷現象を引き起こすと考えられる。
サルが不気味の谷現象の感覚を持つことが判明したことで、コミュニケーション時の脳の電気的活動を分析する際にもうまくデータ収集できるようになるという。ガザンファール氏の研究チームが今回の研究を行ったのは、もともとこの目的のためであった。
現在、霊長類の脳機能を研究する場合は、サルをなだめて同じ作業を何度も繰り返すように仕向けなければならない。しかしこの方法では、自然な社会的相互作用を正確に再現できるとは限らない。
今回の実験でサルが見たいと思うもの、見たくないと思うものが判明したので、サル好みのバーチャルなサルを作成して、日常的な“おしゃべり”に相当する会話を再現できるようになる可能性がある。研究者にとっては、自然な会話を実験室でコントロールできる点がこの方法の大きな利点だ。
将来の展望について、ガザンファール氏は次のように話す。「このようにサルの脳の研究を進めていくことで、最終的には人間のさまざまな疾患に新たな光が当てられるのではないかと期待している。例えば、人間同士のコミュニケーション・ギャップの原因として、特定の脳内伝達物質を特定できるようになるかもしれない」。
今回の最新研究は10月27日発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されている。
Maggie Koerth-Baker for National Geographic News
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