【ロンドン=木村正人】「官僚依存」を脱して「政治主導」を目指す鳩山由紀夫民主党政権は、官僚トップの事務次官の定例記者会見を廃止した。民主党がお手本とする英国ではとっくに、政策を有権者に説明するのは官僚ではなく政治家の仕事になっている。
英国の国家公務員は、政府の政策に関するマスコミへの説明は認められているものの、記者会見で、政府の政策について意見を述べたり、野党の対案を批判したりすることはできない。
各省庁の膨大な広報資料もすべては、閣僚や閣外相の名前で発表されている。
事務次官は下院委員会での審議に呼ばれたときも、政府の政策をどのように実施しているかを説明するのみだ。官僚は大臣答弁を手助けするためメモを入れるなど黒子に徹している。
「出来る限り官僚の力を借りないで大臣、副大臣、政務官で答弁してもらいたい」(小沢一郎民主党幹事長)といった“注文”が飛ぶことなどもともとあり得ない世界なのである。
ひとつには、英国家公務員は、政権交代があっても行政の継続性に支障を来さないようにと公務員規範に定められた、「政治的中立性」に縛られるからだ。
だが、何といっても重要なのは、政策を作るのは閣外相以上で、その政策を責任をもって議会や国民に語れるのも閣外相以上という基本的な考え方である。
ただ、そんな英国でも、「スピンドクター」と呼ばれる報道担当補佐官が権力をふるい、政治不信の原因になったりしている。
マスコミと官僚、「スピンドクター」が三つどもえのドタバタ劇を繰り広げるBBCテレビのコメディー番組、『ザ・シック・オブ・イット(真っ最中)』が人気を集めているのも、そんな背景からだといえる。
主人公のモデルは、ブレア前政権で、演説草稿の作成や報道対応を担う情報戦略局長を務め、イラクの大量破壊兵器をめぐる情報操作疑惑で辞任した元大衆紙政治部長のアリスター・キャンベル氏だとされる。
政治とメディアの関係に詳しいロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のチャーリー・ベケット氏は「ブレア時代、政治任命の報道担当補佐官が急増した。その代表格がキャンベル氏。彼は全省庁のマスコミ対応を牛耳った」と指摘する。ブレア前首相は労組や古参議員の影響を排除するため官邸機能を強化、広報体制も一新した。