鳩山由紀夫首相の長男、紀一郎さん(モスクワ大客員講師)が研究しているモスクワの渋滞は実に凄(すさ)まじい。ところが、そんな大渋滞を尻目に、サイレンと警笛を鳴らしながら対向車線を疾走する高級外車が少なくない。「ミガルカ」と呼ばれる青色灯をつけた、役人や政治家の車である。
交通法規お構いなしの青色灯車両を庶民は嫌悪し、役人らが事故をもみ消したりもするから、なお始末が悪い。そこで、プーチン前大統領は2006年、翌年末の下院選をにらみ、緊急車両以外の青色灯を7500から1千以下に制限する大統領令を出した。
その結果、関係機関に割り当てられた青色灯の保有数が興味深い。連邦保安局(FSB)230▽内務省173▽連邦警護局(FSO)150▽連邦伝書使局70▽最高検65▽大統領府50−などで、プーチン氏の権力基盤である大統領直轄の武力・保安系省庁が上位に軒を連ねたのである。
それが昨年、氏が首相に就任すると、内務省などから一部を奪い、政府の取り分を35から65にほぼ倍増する政令に署名した。今や、一般省庁の大臣はおろか、庁や局の長あたりも青色灯を使い放題となった。「権力構造を知りたければ青色灯の数を見ればいい」(下院議員)というのもうなずける話である。
役人や政治家が青色灯の高級車でふんぞり返っている限り真剣に渋滞対策に取り組むことはないということか。(遠藤良介)