米陸軍の兵士ら約40人が死傷したテキサス州フォートフッド基地での銃撃事件は、犯人がイラクかアフガニスタンへの派遣を控えた中東系の軍医少佐だったことで、全米に衝撃を与えた。戦地への派遣の重圧に耐えかねた末の凶行か、イスラム原理主義に共鳴しての破壊活動か−。テロとの戦いを進めるオバマ大統領は「恐るべき事件の真相を究明する」として、軍・司法機関に徹底した動機の解明を命じた。
≪39歳、ヨルダン系≫
事件は、約5万人の軍人・軍属が所属する世界最大級の米陸軍基地内で起きた。昼食を終えたばかりの米兵らに向け、犯人のニダル・マリキ・ハサン少佐が突然、2丁の拳銃を乱射した。基地の憲兵や、通報を受けた地元警察が現場に殺到し、少佐は女性警察官の発砲で負傷し拘束された。
基地には、イラクのサダム・フセイン元大統領を拘束した第4歩兵師団など複数の戦闘部隊が駐留。これまでの対テロ戦では、500人以上が戦死している。精神医学の専門家であるハサン少佐は、PTSDに苦しむ米兵を治療するため、ワシントンのウォルターリード陸軍病院から7月に赴任した。近くイラクかアフガンに派遣される予定だったという。
同僚のテリー・リー大佐は、FOXテレビに対し、ハサン少佐が「われわれは戦場にいるべきではない」として、イラク、アフガンへの派兵に反対していたと証言。米兵への診療を通じて戦地の状況がどのようなものか知り尽くしていたとみられる。
ハサン少佐はバージニア州出身の米国籍だが、ウォルターリード陸軍病院に在職中は首都近郊のイスラム教施設で熱心に礼拝していたとの報道もある。AP通信によれば、少佐は最近、インターネット掲示板への書き込みで、米兵を狙う自爆テロの犯人を「誇り高い目的に身をささげる勇敢な英雄」とたたえていたという。
≪陸軍の自殺急増≫
米陸軍では、今年1〜9月だけで117人が自殺するなど、自殺が急増中だ。5月にはイラク派遣中の軍曹が精神的に変調を来し、上官ら5人を射殺する事件が起きていた。
今回の事件は、テロとの戦いが出口の見えないまま長期化する中で起きてしまった。アフガンへの米軍増派の決断を控え、オバマ大統領は軍の士気が増派に耐え得るのかについても、新たな検討を迫られる。(ワシントン 山本秀也)