【ワシントン=山本秀也】米テキサス州のフォートフッド陸軍基地で米兵13人が死亡した銃乱射事件は、「安全が確保されたはずの国内基地での惨劇」(ニューヨーク・タイムズ紙社説)として、9年越しの対テロ戦争を支えた米国社会に激しい衝撃を広げている。当局の公式検証を待たず、米メディアはわずか4分で丸腰の新兵らを虐殺した中東系のニダル・マリキ・ハサン軍医少佐の凶行について、詳細な報道を24時間態勢で続ける構えだ。
米CNNテレビは、5日の事件発生からほぼすべての番組で事件を報道。「現場に到着したときには、まさに修羅場だった」という現場警察官のコメントなどを伝えた。被害者の多くが10代の新兵だったことで、多くの主要紙があどけなさの残る生前の写真を掲載し、「19歳になったばかりなのに」といった遺族のコメントを報じた。
イラク、アフガニスタンで対米攻撃による犠牲を出す米軍内部でも、後方基地での身内による犯行には衝撃を隠せない。6日記者会見したケーシー陸軍参謀総長は、中東系の兵士への報復を懸念しつつ、「憶測での判断を避けるよう部隊指揮官に指示した」と語った。
米社会の衝撃は、少佐による犯行状況が明らかになるにつれ、エスカレートする様相を強めている。
少佐は、戦地派遣前の予防接種のため整列していた第36工兵旅団の兵士約300人に向け、突然「アラー・アクバル」(アラーの神は偉大なり)と叫び、約4分間にわたり拳銃を乱射した。
拳銃は少佐が事前に購入した私物。小口径で貫通力が極めて高いうえ、半自動式ながら20発の連続発射が可能なタイプだった。他に回転式拳銃も使われ、2丁合計で「100発以上」の銃弾が発射されたことが、現場検証で分かった。負傷者はその後38人に増えた。
犯行直前に、少佐は隣人に決別の言葉を告げて、イスラム教の聖典コーランを贈呈。「私はもう支度ができた」と言い残していた。米軍内の幹部が中東での自爆テロ犯と同様に生還しない気構えだったことや、イスラム原理主義に思想的に共鳴していたことも衝撃の輪を広げている。
一方ロイター通信によると、ヨルダン川西岸パレスチナ自治区在住の少佐の祖父は、「彼は米国を愛していた」と述べ、犯行に政治的な動機があったとの見方を否定した。