領土的係争の際の決め手は「実効支配」しかない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

領土的係争の際の決め手は「実効支配」しかない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

沖縄県・尖閣諸島の南小島南東の領海内を航行する海上保安庁と中国海警局の船(C)共同通信社

【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】#5

 尖閣諸島は同床異夢ならぬ“同島異夢”の波間に漂っている。中国は尖閣棚上げ論に立ち、日本の国有化によってこの合意を一方的に破ったと強硬姿勢に走り、これに対して日本政府は依然として棚上げ論は外交文書に残っておらず、そうした合意はなかったと否定。「尖閣諸島をめぐり、解決すべき領有権の問題は存在していない」との公式見解を崩そうとしない。

「一方が領有権を主張し、実際に領海侵入を繰り返しているというのに、『領有権の問題は存在しない』というのは余りにも現実を反映していない。これでは圧倒的な軍事力を備えつつある中国に押し込まれるだけではありませんか」

 全国紙の元中国総局長は日本政府のかたくなな姿勢こそが尖閣領有権問題を複雑化している原因だと指摘する。

 日中両国は1996年、海の憲法とも呼ばれる国連海洋法条約を批准している。この条約は領海(起点となる領土から12海里)、接続水域(領海から更に12海里)、接続水域、排他的経済水域などを規定しているが、その基準は1つではなく、日本は尖閣諸島を起点とし、中国は大陸棚による領海などの設定に依拠している。

 そして係争解決のための国際海洋裁判所も設置しているが、領土的係争がないという前提に立てば、提訴の理由も何もなくなる。そして提訴しても短からぬ時間を要し、その間にも尖閣水域には中国海警局艦艇が遊弋を続け一寸一寸とにじり寄ってきているのである。

「世界史の中でも他国に占領された領土が平和的に返還された例は沖縄など極めて少ない。領土的係争の際の決め手は実効支配しかない。日本は何としても実効支配を守り抜くことが不可欠です」(前出の全国紙の元中国総局長)

 実効支配を強めるためには防衛力、海上保安力の強化は欠かせない。しかし、日中間の防衛力・戦力差は今や昔日のものではない。昨年、米国で衝撃的なレポートが公表された。その名も「日本の海洋パワーに対する中国の見解」。ワシントンの安全保障研究機関「戦略予算評価センター」(CSBA)が昨年5月中旬にまとめたものである。報告書は日本人が目を背け、耳を塞ぎたくなる現状が明らかになっている。=敬称略(つづく)

(甘粕代三/売文家)

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