日米安保5条に「米国に尖閣防衛の義務がある」とは一言も書かれていない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

日米安保5条に「米国に尖閣防衛の義務がある」とは一言も書かれていない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

バイデン米大統領との電話会談を終え、大統領の「日米安保条約5条は沖縄県・尖閣諸島に適用」について取材に応じる菅首相(C)共同通信社

【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】#6

 米ワシントンの安全保障研究機関「戦略予算評価センター」(CSBA)が昨年5月中旬にまとめた「日本の海洋パワーに対する中国の見解」は日中間の防衛力・戦力に関して次のように指摘している。

・総合的に算定されることは少ないが、中国はこの5年ほどで海軍力を劇的に増強し、日本に対して大幅な優位を獲得した。

・大規模な海軍増強は2010年頃から始まり、習近平政権下の過去5年ほどで海軍艦艇の総トン数や性能、火力などが画期的に強化。特に艦艇装備のミサイル垂直発射装置の増強は日本を圧倒。

・中国側は@尖閣諸島奪取でも東シナ海の覇権獲得でも、日本を屈服させることが容易になったとみて、軍事力行使への抑制が減少した。A尖閣占領では日本側を敏速に圧倒し、米軍に介入をさせない具体的なシナリオを作成した。B日本との全面戦争も想定し、その場合には中国の各種ミサイルの威力で日本の防衛を崩壊させる自信を強めている――などと分析した。

 防衛力・軍事力の単純な比較では日本の防衛力は既に中国の軍事力に凌駕され、中国がその気になれば、尖閣の上陸占領は困難ではないということになる。しかし、日本は日米安保条約を米国と結ぶ同盟国である。米国の核の傘の下にあるという抑止力を持つ。

「しかし、その米国とて日本の期待に応えることには積極的ではありません。米国は沖縄・尖閣諸島に対してダブルスタンダードなのです」(全国紙の元中国総局長)

 米国は尖閣諸島などの島嶼を含む沖縄を1971年、日本に返還した。しかし、米国は沖縄本島や八重山諸島には日本の主権を認めたが、尖閣諸島に対しては施政権だけしか認めていない。2011年、オバマ政権の国務長官、ヒラリー・クリントンが尖閣は日米安保条約5条の適応範囲であると初めて表明した。しかし、これとて日本の尖閣にどれだけの効力を発するか疑わしい。5条は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」。

 米国に尖閣防衛の義務があるとは一言も書かれていないのだ。=敬称略(つづく)

(甘粕代三/売文家)

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