米報道官の誤発言が物語る 尖閣は米国に喫緊の外交問題ではない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

米報道官の誤発言が物語る 尖閣は米国に喫緊の外交問題ではない【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】

対中政策に、米国は戦略調整の真っただ中にある(バイデン米大統領)/(C)ロイター

【緊急連載 尖閣諸島“開戦”前夜】#7

 狂乱のトランプ政権が大混乱の末、終わりを告げ、米国は戦略調整の真っただ中にある。特に前大統領・トランプが火をつけた米中貿易戦争の中で滅多やたらと打ち出した対中制裁の諸政策の調整に躍起である。そうした中、尖閣問題に関して驚くべき茶番が演じられた。

 米国防総省報道官のJ・カービーは2月23日、定例記者会見で「尖閣の主権をめぐる日本の主権を支持する」と発言し、中国海警局による周辺水域での活動停止を求めた。時事通信がこれを速報、米国は従来の尖閣に対する方針を大転換したものと日本の一部では歓迎された。

「カービー発言が事実であれば米国の尖閣戦略の大幅な変更を意味します。新聞なら1面トップ級、テレビでも間違いなく第1項目として長尺で報道すべきバリューのあるニュースです。しかし、そのような扱いをした大手マスコミはどこもなかった。極めて不思議な現象でした」

 全国紙の元中国総局長は、米ワシントンでカービー会見をカバーした記者、この原稿を確認したデスクの双方が尖閣に主権を認めたという事実の重みを理解していなかったのではないか、と指摘する。

 カービー発言に中国は即座に猛反発。3日後の26日になって「(先日の発言は)誤りであり、混乱を招いた」と謝罪。「日米安保条約に基づく尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の関与はゆるぎない」と訂正したのだ。

 いかに米バイデン政権が戦略見直しに忙殺されているとはいえ、尖閣の主権、施政権という日本の生殺与奪を握る重大な問題で二転三転を繰り返したことは、尖閣問題は米国にとって決して喫緊の重要な外交問題でないことを物語る。

 鳥も通わぬ無人島の尖閣諸島よりもいつ火を噴くかもしれない中東、北朝鮮問題が重要であるのは自明の理であろう。パックス・アメリカーナに挑戦する中国と尖閣を原因に銃火を交えることなど毛頭考えていまい。米国が今後、尖閣問題でさらに一歩を踏み出すことに期待など寄せることはできない。

 ある米軍関係者はこう言い放った。

「センカク? そんな島をどれだけのアメリカ人が知っているのか! そんな無人島の防衛にアメリカの若者の血を流すことが今のアメリカで許容されるかね?」

 日本には中国の故事成語で中ソ対立の際に毛沢東が打ち出した「自力更生」の道しか残されていない。=敬称略(つづく)

(甘粕代三/売文家)

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