石破発言を拡散する人が見落としていること 民主主義とは結果ではなく「プロセス」にある(立岩陽一郎)


(石破茂元幹事長(C)日刊ゲンダイ)

立岩陽一郎【ファクトチェック・ニッポン!】

 自民党の石破茂元幹事長が発言を訂正し謝罪した。その発言は、「イギリスでは女王の国葬でも議会で決議している」というものだった。

 TBSが、「この石破氏の発言についてNPO法人インファクトがイギリス議会に確認したところ『エリザベス女王の国葬に関し、議会の議決がなされた事実はなかった』ということです」と報じている。「インファクト」とは私が編集長を務めるオンライン・メディアだ。

 これを、安倍氏を支持する人々が拡散している。一方、安倍氏の国葬に反対する人からは、立岩は安倍氏の国葬に反対していたのではないか? との疑問の声が届いている。

■事実より「立ち位置」が優先される国

 まず、明確にしておきたいのは、ファクトチェックとは立ち位置によらず発言の事実を確認する作業であること。また、発言者を批判するものでもないこと。これらが日本では理解されていない。この国では、事実より立ち位置が優先される部分が極めて強いからだろう。

 ファクトチェックについて「事実を積み上げても真実は見えない」と批判する人もいるが、私はそう考えない。米ワシントン・ポスト紙の編集長だった故ベン・ブラッドレー氏は、「事実は時に不都合だが、長い目で見れば嘘より安全だ」と語っている。その言葉は今も同紙編集局に大書されている。それは、伝説的編集長とも称される氏の長い経験から出た言葉だろう。私のささやかな取材の経験とも符合する。

 ただし、石破氏発言のファクトチェックは誤解されている。少し説明しておきたい。この取材をインファクトのファクトチェッカーである田島輔氏が私にもってきた案件は、「英国でも女王の国葬は議会の同意が不要ではないか」というものだった。

 私は、「要不要ではなく、素直に石破氏の発言にある女王の国葬について議会で決議したか否かを調べて欲しい」と指示した。慣習法の国で法的な部分を確認するのは難しいとの判断と、ファクトチェックが政治的に利用されかねないとの懸念を抱いたからだ。

 事実の確認に徹して欲しいと念を押し、田島氏がそれに従って努力してくれた結果が前掲だ。しかし、実はインファクトの調べは、そこでは終わっていない。

■仮に英国で安倍元首相の国葬を行うなら?

 英議会は国葬について、「一般に君主に限られるが、在位中の君主の命令と資金を拠出する議会の議決によって、例外的に著名な人物にも拡大することができる」と説明した。首相も「例外的」な対応ということになる。つまり、仮に英国で安倍元首相の国葬を行うならば議会の議決が必要だということだ。石破氏の訂正を拡散する人は、そこを見落とすべきではない。

 自公が過半数を占める国会で審議をすれば結果は同じではないかとの指摘はある。それでも国会で審議して決議することに意味がある。民主主義とは得られた結果ではなく、そのプロセスにあるからだ。今回のファクトチェックは、その重要さをあらためて示すものとなったと言える。加えて、日本の民主主義についても疑問を呈するものとなったと言えるだろう。

(立岩陽一郎/ジャーナリスト)

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