プーチンついに“最後のカード”切った…「30万人動員令」に透けるロシアの焦り


(国民向けに演説するロシアのプーチン大統領(ロシア大統領府提供・AP=共同))

 とうとう「動員令」である。

 ロシアのプーチン大統領が21日に放映されたテレビ演説で、ウクライナ侵攻をめぐり、国民の部分的動員令に署名したと発表、即日発効した。軍務経験のある予備役を招集するもので、ショイグ国防相によると対象は30万人。プーチンは「ロシアとその国民を守るため、あらゆる手段を講じる用意がある」と核兵器使用を辞さない姿勢も強調した。

 前日の20日に、ウクライナ東部や南部の4州で親ロシア派がロシア編入に向けた「住民投票」を23〜27日に実施すると発表していた。プーチンの演説はそれに呼応する形でもある。いずれも、ロシア劣勢を打開する狙いとみられている。

「モスクワの友人から『これは戦争だ!』と連絡がありました」

 こう話すのは、筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)。動員令は、新たな局面に入ったことを意味すると、こう続ける。

「『部分的』と言っていますが内容は『全面的』に近い。いまは『特別軍事作戦』という建前であり、『戦争』と言えない矛盾を抱えているからです。『戦争』という言葉が使えないのは、『特別軍事作戦』が失敗したことを認めることになってしまうからです」

■ロシア軍を悩ませる著しい戦力不足

 ショイグはロシア軍の死者が5937人になったと明らかにしたが、米国防総省は負傷者も含めたロシア軍の損害を「7万〜8万人」と推計している。ロシア軍の戦力不足は著しく、「大統領付属の人権擁護委員会の委員6人が、『刑務所の囚人を戦場へ送るのは人権侵害だ』と検事総長に訴えたほどです」(中村逸郎氏)という。

 国内の動揺を抑えるため、今回の「部分動員」では学生や徴集兵は対象外だとされているが、それで済むのかどうか。

「ウクライナの結束がますます強まり、NATO(北大西洋条約機構)だって黙っていない。ロシア国内の分断も進むでしょう。プーチンはついに最後のカードを切った。追い詰められ、ウクライナ国内の原発がどうなるのかが心配です」(中村逸郎氏)

 侵攻から7カ月。いよいよ最終局面を迎えるのか。

■ロシア全土で再燃した反戦デモ


(モスクワで警察当局に拘束される反戦デモ参加者(C)ロイター)

 ロシア全土で21日、プーチン大統領がウクライナ侵攻のために出した部分的動員令への抗議デモが広がった。

 ロシアの人権団体OVDインフォはこれまでに全国38都市で少なくとも1457人が拘束されたと発表した。反戦デモは弾圧で沈静化していたが、若者らの懸念で再燃した。

 独立系放送局「ドシチ」が伝えたモスクワ中心部の映像では、デモ隊が「戦争反対」とスローガンを叫ぶと、警官隊が次々とデモ参加者を拘束して護送車に連行した。参加者が警棒で殴打されたり、意識を失ったりする様子も見受けられた。

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