日中国交正常化から50年 日本が「台湾有事」に介入する法的根拠はあるのか(田岡俊次)


(北京の人民大会堂で周恩来・中国首相(左)と杯を酌み交わす田中角栄首相=1972年9月28日(C)UPI=共同)

【特別寄稿】田岡俊次

 今年9月29日は、日中国交正常化の50周年記念日として慶典が催される。

 それを前に林芳正外相は12日、経団連などが主催したシンポジウムにビデオメッセージを寄せ、双方の偉大な先人の努力を称え、安定的な関係を構築することは我々の使命、責務だと述べた。だが日米と中国は戦争に向かいつつあるのが実態だ。

 田中角栄総理と周恩来総理らが1972年に署名した日中共同声明は、

「日本国政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」

「中華人民共和国政府は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する」

 などと定めている。

 78年に園田直外相らが署名した日中平和友好条約は、72年の共同声明に示した諸原則が厳格に順守されることを再確認し、国会の承認を得て批准された。また日本国憲法98条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規はこれを誠実に順守する」と定めている。

 これらの条項によれば台湾は非合法な組織に占拠されていると日本は認めているのだから、中国政府軍が討伐しても西南戦争のような内乱にすぎず、もし自衛隊が反政府軍を支援すれば重大な憲法違反になってしまう。

 自衛隊が「台湾有事」を念頭に置くと公言し、米軍などと共同演習をすることをどう法的に整理しているのか、と防衛省に尋ねたところ、2、3日後に「省内でも検討したが分かりません。外務省に聞いて下さい」と言う。

 外務省の条約課に質問すると、日中共同声明と平和友好条約を読み上げるから「それは分かっている。それと台湾有事の演習の関係はどうか」と問うと、「演習は防衛省がしているのだから、そちらに聞いて欲しい」とキャッチボールになった。

 日中平和友好条約の期間は、日米安保条約と同様に10年で、その後は1年前の予告で廃棄できるが、米国を含む180カ国が「一つの中国」を認めて中国と国交を結んでいるのに、日本だけが条約を廃棄する突飛な行動を取ることは考えにくい。

 台湾の人々の多くが独立を望んでいるなら、それを支援する理屈も何とかつけられようが、台湾行政院の昨年11月の調査では、あいまいな「現状の維持」を望む人が84.9%、「すみやかに独立」が6.8%、「すみやかに統一」が1.6%だ。中国と台湾には親密な経済相互依存関係が生じ、台湾の輸出の44%は中国向けの部品などだ。

 中国にとっても武力で統一を図り、台湾の工業を破壊すれば自国にとり大打撃となるから中庸の現状維持で戦争を避けられる余地は十分ある。日本はそれを支持することが安全保障上も経済的にも得策で、法理にもかなうだろう。

(田岡俊次/軍事評論家、ジャーナリスト)

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