サンプルと実態にズレ 世論調査を100%信じることの危うさ

サンプルと実態にズレ 世論調査を100%信じることの危うさ

投票心理に大きく影響(C)日刊ゲンダイ

【ここが変だよ日本の選挙】(8)

 私が政界で働いていて最もドキドキしたのは、選挙戦が始まる直前にマスコミ各社が行う世論調査の結果が出る時だった。ただ、その直後は、ドラマの途中で結末を教えられたような気分になる。

 国政選挙では、この調査結果で大差がついていたら、その後の1〜2週間で逆転するのは大変だと言われている。

 しかし、この数字は本当に正しいのだろうか? まず、サンプルの問題がある。統計学的には、電話などでアプローチした先の6割程度から回答を得なければ、調査対象の正確な縮図とは言い難い。

 携帯電話の普及も影響する。携帯番号には市外局番がないので、選挙区ごとの調査ではサンプルを集めにくい。一方、固定電話にかけて出るのは高齢者の世帯が多いため、偏った調査になりがちだ。

 ある県の知事選で、世論調査を業者に頼んだことがある。支援していた候補は相手候補を少しリードしているとの結果が出たので、このまま緩まずにいけば勝てると思っていた。しかし偶然、相手候補の陣営が行った世論調査の結果が手に入り、それを見て驚いた。負けているのだ。詳しく調べてみると、我々の調査のサンプルが実態とズレており、その点を調整して再計算すると確かに劣勢だった。

 マスコミの最近の世論調査によれば、内閣支持率は、同じ日に調査したNHKと日経・テレビ東京で7ポイントも違う(表)。FNN・産経とJNNでは6・7ポイントの違いだ。原因はやぶの中で、いまひとつ釈然としない。

 調査の宿命ともいえる誤差の問題もある。例えば、4月13、14日に毎日新聞が実施した世論調査では、内閣支持率41%、不支持率37%だった。私が誤差を簡易補正して計算したところ、支持率は38〜44%、不支持率は34〜40%となった。支持が不支持を上回っているとは必ずしも言い切れない。

■投票心理に大きく影響

 選挙戦が始まる直前にマスコミが発表する各選挙区の情勢は、日本全体の内閣支持率より把握するのが難しいので、信頼度は劣るだろう。この時期の世論調査の結果は、有権者の投票心理に大きく影響しかねないので心配だ。

 3年前のアメリカ大統領選挙では事前の世論調査の多くがはずれ、トランプが勝利した。調査の数字を百パーセント信じるのはやめた方がよい。

 選挙の神様と呼ばれた田中角栄元首相はかつて「数字に興味のない者には選挙はわかりません」と言った。キーワードは「正確なサンプルか?」「誤差は?」である。

(近藤学/早大理工総研招聘研究員)

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