自民党のトンデモ改憲草案 成立なら介護や引きこもりは「家族任せ」に

自民党のトンデモ改憲草案 成立なら介護や引きこもりは「家族任せ」に

「自助」より「公助」だ!(C)日刊ゲンダイ

包丁で長男(44)の胸を刺して殺害した元農水省事務次官、熊沢英昭容疑者(76)は、長男の引きこもりや家庭内暴力を役所に一切相談しなかったという。この報道を受け、一部のネトウヨからは「親がけじめをつけた」などと“持ち上げる”声も出ているが、とんでもない話だろう。

 厚労省は都道府県や政令市に設置している相談窓口「ひきこもり地域支援センター」の活用を呼びかけている。霞が関官庁の次官まで務めた熊沢容疑者が制度を知らなかったはずがなく、本来であれば早い段階で相談するべきだったのに、そうしなかったのはなぜか。考えられるのは長年の役所暮らしで、悪しき自民党政権の空気を肌感覚で感じ取っていたからではないか――ということだ。というのも、安倍首相がもくろむ改憲で自民党草案の第24条に設けた項目にはこう書いてあるからだ。

〈家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない〉

 家族道徳をあえて憲法に盛り込むこと自体が時代錯誤のトンデモ論なのだが、ここで強調しているのは「家族問題は相互扶助せよ」ということ。「安倍応援団」の「日本会議」が公表している〈新憲法の大綱〉でも、〈国民の権利及び義務〉として〈自由を享受し、権利を行使するに当たっては、自助努力と自己責任の原則に従う〉〈国は国家・社会の存立の基盤である家族を尊重、保護、育成すべきことを明記する〉などとある。

 つまり、これらの考えに照らし合わせれば、家族における介護や不登校、引きこもりは、公的機関を利用するなどの「公助」ではなく、家族が自己責任のもとに面倒を見る「自助」を優先すべしということだ。4日付の朝日新聞で、立正大の関水徹平准教授(社会学)が〈ひきこもりの支援に対して『国がお金を出してやるようなことか。家族の責任だ』と言われるような、家族主義的な風潮が背景にあり、追い詰めている〉と、ズバリ指摘していたが、熊沢容疑者もそんな空気を身に染みて感じていたから相談しなかったのではないのか。

 仮に自民改憲案が成立すれば、今以上に「家族の責任」が強調され、引きこもり問題がますます、深刻化するのは間違いない。

 そもそも、引きこもり問題は今に始まったことじゃない。安倍も過去、〈不登校やいわゆる引きこもりの原因については(略)極めて重要な課題と認識しております〉(2007年4月の衆院本会議)、〈ニートや引きこもりの方々には(略)きめ細やかな相談支援や就労に向けた支援を進めております〉(13年5月の参院予算委)――などと言っていたが、結局、言葉だけでナ〜ンもしてこなかった。「家族で何とかしろ」というのがホンネなのだから、何もやる気がなかったのだろう。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。

「改憲草案が成立すれば、介護や引きこもりは家族任せにしても構わないという考え方が合法化してしまう。例えば、児童虐待問題で児童相談所の後手後手の対応が度々、問題になりますが、介護や引きこもり問題でも同じような状況に陥りかねないのです」

 やはり改憲は何が何でも阻止すべきだ。

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