新国立過労自殺 工期最優先と犠牲の上に成り立つ東京五輪

新国立過労自殺 工期最優先と犠牲の上に成り立つ東京五輪

新国立競技場の建設現場(C)日刊ゲンダイ

 2020年東京五輪開幕まで、24日でちょうど残り3年。「五輪に間に合うのか」という“至上命令”が強まり、準備が加速することは必至だが、新国立競技場の建設工事に関わっていた当時23歳の男性が過労自殺したとして、遺族が労災を申請したばかり。「国家的行事」の名のもとに、過労を強いられた若い命が犠牲になったのだ。人手不足も進む中、このまま「五輪に間に合わせろ」と工期を最優先すれば、再び不幸が繰り返されるに違いない。

 昨年4月、都内の建設会社に新卒で就職した男性は、12月から新国立の地盤改良工事の現場監督を任された。新卒1年目には荷が重いうえ、極度の長時間労働、深夜勤務、徹夜が続き、自殺直前1カ月の残業は211時間に達した。

「どんなに激務でも、仕事の上で誰かの“見守り”があれば何とかなるのですが、今の建設現場は人間関係が希薄。若い男性は責任をひとりで抱え込んでしまったのでしょう」(新国立問題を追及する建築エコノミストの森山高至氏)

 五輪関連工事はこれからが本番だ。当初予定より1年余り遅れて着工した新国立の他、晴海の選手村や有明アリーナなど、新設や大幅改修が必要な16施設のうち、完成しているのは「武蔵野の森総合スポーツプラザ」のみ。多くは着工間もなく、「大井ホッケー競技場」など手つかずの施設もある。

■急ピッチのしわ寄せは労働者に

「この先、五輪施設は基礎工事から、もっと人手がかかる本体工事に移ります。加えて湾岸地区や都心など民間中心の再開発も相次ぎ、建設関連の人手不足はいっそう深刻になります。このままでは建設労働者ひとりの負担は増えるいっぽうです」(森山高至氏)

 国家の威信をかけたイベントの強行で、国民の命が軽んじられるなんて、まさに戦争だ。労働問題に詳しい政治学者の五十嵐仁氏はこう言う。

「東京五輪のために人が死ぬなどとんでもないことです。絶対に繰り返されてはなりません。返上が難しいなら発想を切り替えなければダメ。現に労働力不足は明らかなのですから、3年後に間に合わせるには、少ない労力で開催できるように見直すべきです。観客がいて、選手が競技できればいいわけで、活用できる既存施設はいっぱいあると思いますよ。見えを張らず、こんなに力を抜いても成功したという五輪モデルをつくればいい」

 誰かの犠牲の上に成り立つ東京五輪など誰も望まない。若者の過労死を機に大転換すべきだ。

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