台風19号“緊急放流”6ダムで事前放流せず 国交省・自治体に問われる重大責任

【台風19号】ダム緊急放流を巡り「人災ではないのか」という声 ダム事前放流されず

記事まとめ

  • 台風19号のダムの「緊急放流」を巡り「人災ではないのか」という声があがった
  • 全国52河川73カ所で堤防が決壊し、相模川の支流では死亡事故も発生した
  • 今回、緊急放流した6ダムで「なぜ事前放流されなかったのかは不明」という

台風19号“緊急放流”6ダムで事前放流せず 国交省・自治体に問われる重大責任

台風19号“緊急放流”6ダムで事前放流せず 国交省・自治体に問われる重大責任

神奈川県相模川の支流では、親子4人が亡くなった(C)共同通信社

「人災ではないのか」――。台風19号の豪雨で水位が上がったダムの「緊急放流」を巡り、こんな声が出始めている。国交省によると、全国52河川73カ所で堤防が決壊。神奈川県の相模川の支流では、親子が増水した川に流され死亡する事故が発生した。被害拡大の背景には、治水事業に関する“行政の怠慢”が透けて見える。

 緊急放流は異常洪水時防災操作と呼ばれ、ダムの貯水量が豪雨などの影響で満杯になった場合に、流入量と同じ量の水を放出する措置のこと。要するに、ダムの決壊を防ぐため、ダムからあふれた水を川に流し込む操作だ。

 国交省によると、今回、緊急放流は12日夜から13日未明にかけ、国が管理する美和ダム(長野)や県が管理する城山ダム(神奈川)など計6カ所で実施された。相模川上流の城山ダムでは12日午後9時半から緊急放流が行われたために水位が上昇。相模川支流の串川では同日午後10時半ごろ、家族4人が乗った車が転落し、全員が遺体となって発見される事故が起きた。

■西日本豪雨の教訓を生かせず

 緊急放流と死亡事故との因果関係は不明だが、昨年7月の西日本豪雨でも同様の事故が発生している。愛媛県のダムを緊急放流した後、河川が氾濫し、浸水被害が拡大。9人の犠牲者が出たのだ。

 この被害を受け、国交省は昨年12月、「異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能に関する検討会」の提言を公表。有識者が<直ちに対応すべきこと>として、次のように指摘している。

<あらかじめ利水者の理解や協力等を得て、洪水貯留準備操作(事前放流)の充実を図り、より多くの容量を確保すること>

 これはダムが満杯になってから慌てて放流するのではなく、事前に余裕を持って放流して備えておくことを勧めている。ところが、国交省によると、「緊急放流した6ダムでは事前の水位調節(事前放流)はしていなかった」(水管理・国土保全局河川環境課)というのだ。

「事前放流は、発電や工業、農業などの目的で河川水を利用する利水者との協議が必要です。事前放流後に水位が回復しなければ、利水者との権利問題が発生してしまうからです。なぜ、6ダムで事前放流が実施されなかったのかは不明です」(前出の河川環境課)

■ダムに依存した治水事業

 国交省はあくまで、事前放流できる環境を整えてきたと説明するが、西日本豪雨災害の教訓を生かせず、今回も緊急放流に踏み切ったとすれば「人災」と批判の声が出るのも当然だ。ダム建設などに反対している水源開発問題全国連絡会の遠藤保男共同代表もこう指摘する。

「緊急放流はダムで抑え切れなくなった水があふれ出ることと同じなので、本来なら、ダムの水が流入する河川の治水整備を優先しなければならない。そもそも、国がダムに依存した治水事業を進めてきたのが間違いなのです。川の容量の限界にダムからあふれた水が加われば、決壊するに決まっています。ダム優先の治水計画の“しっぺ返し”ですよ」

 国や自治体の怠慢によって、犠牲を強いられるのは国民だ。

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