東大が方針転換 英語民間試験に突き付けた「NO!」の波紋

東大が方針転換 英語民間試験に突き付けた「NO!」の波紋

東大の福田副学長(右)は18年9月の会見でもピシャリ(C)共同通信社

萩生田文科相の「身の丈」発言で世間の不信の的となった大学入学共通テストに、さらなる逆風が吹いている。導入延期となった英語民間試験をめぐり、東大副学長が2020年度に実施する入試の出願要件から排除する方針を示したのだ。課題山積の国語の記述式問題の利用についても再検討するという。東大は入試改革に懐疑的ながらも完全否定はしてこなかったが、ここにきて方針転換。突き付けた「NO」は大きな波紋を広げそうだ。

「民間試験の成績や、英語力を証明する高校の書類の提出を出願要件とするのは難しい」

 11日の会見でこう見解を示したのは、東大で入試を担当する福田裕穂副学長。東大はそもそも、経済格差や地域格差が指摘されてきた英語民間試験の導入に消極的だった。そのため、昨年9月に独自の出願要件を公表。受験生に求める具体的な英語力の基準は寛容だった。

(1)語学力の国際標準規格「CEFR(セファール)」のA2レベル以上相当(2)「CEFR」A2レベル以上相当の英語力を示す高校による証明書(3)@Aのいずれも提出できない事情を記した理由書――。「CEFR」A2レベルは英検準2級相当だ。民間試験を否定しないものの、ハードルを低く、ウエートを小さく設定したのだが、さらにこれをガラガラポンするというのだ。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はこう言う。

「東大の動きは他大に大きな影響を及ぼすとみています。そもそも、東大は英語民間試験の導入が受験生に公平・公正な入試を担保しないと判断しつつ、文科省の方針に歯向かわないギリギリの独自基準を設定していた。一連の騒動を受けてカジを切った格好です。これに追随し、民間試験を活用しない大学が相次ぐ可能性が高い。不公平感に懸念を抱きながらも、大半の受験生が挑戦する共通テストに導入されるとの事情から、消去法的に利用を決めた大学は少なくありません」

 文科省によると、導入見送り前(10月21日時点)に英語民間試験の具体的な利用を決めていた大学は全体の59%。うち、東京の難関大で全学部試験に利用するとしたのは上智だけ。早稲田や立教はマチマチだった。関関同立でも対応は分かれていた。

■国語記述式問題も再検討示唆

 導入中止を求める声が日に日に強まる国語の記述式問題をめぐっても、東大は「できるだけ早く対応を決め、公表したい」(福田副学長)と見直しを示唆。これについても難関私大の利用状況はバラバラだ。

「記述式問題の採点は、内容や表記方法でA〜Eの5段階評価。採点ミスひとつで、評価が1段階変わる可能性がある。2回実施されたプレテスト(試行調査)では採点ミスが0・2%、0・3%という結果でした。受験生50万人に対し、1000〜1500人が犠牲になる計算です。自己採点はさらに難しいため、受験生が本来志望すべき大学を見誤ってしまうリスクが非常に高い。英語民間試験にせよ、国語と数学の記述式問題にせよ、文科省は導入を中止した方がいい。30年以上の運営ノウハウがある大学入試センター試験を続行する方が受験生にメリットがあるのは明白です」(石渡嶺司氏)

 全国86大学で構成される「国立大学協会」はどう動くか。英語民間試験の成績を出願資格や2次試験の合否判定に活用するかを29日にHPなどで発表予定だ。

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