24時間でスピード決定 政局の産物だった「英語民間試験」延期

24時間でスピード決定 政局の産物だった「英語民間試験」延期

反省の色なし(C)共同通信社

【アベ政治の食い物に 教育行政の惨状】#1

 11月1日朝、萩生田文科相が2020年度から実施する大学入学共通テストに英語民間試験を導入する既定路線の変更を突如宣言した。実施を延期し、何と4年後の24年度を目指して再検討するというのである。

 え? 今? 何故? との驚愕が、全国の教育関係者の間に起きる。それもそのはず、この日は、来年度からの導入に伴い民間英語試験の成績を大学側に提供するための「大学入試英語成績提供システム」に使用する「共通ID」の発行申し込み手続き初日だった。

 20年度に受験して21年4月入学を目指すのは、現在の高校2年生だ。彼らは、各自「共通ID」を取得した上で希望する英語民間試験に受験申し込みを行い、3年生になったら4月から12月の間に2回まで試験を受ける。その結果が大学入試に反映されていく。

 つまり、「共通ID」発行申し込みからすべてが始まるわけで、大半の高校では、大学受験を志望する2年生全員の申込書を取りまとめて郵送したところだった。1日朝、職員室に激震が走ったのは言うまでもない。受け付ける側の大学入試センターは、7日になってようやく返送手続きを発表する慌てぶりだ。

 これだけならまだいい。最も多くの受験が予想された「英検S―CBT」は、既に予約段階で3000円の払い込みを受けており、30万人にも及ぶ大量の返金騒動となっている。

 こんな大混乱を招いた決定は、極めて短時間のうちに行われた。10月24日夜の「プライムニュース」(BSフジ)で萩生田文科相が「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」と発言。これが教育格差の容認ではないかと批判が集まり、謝罪、撤回に追い込まれたのだが、試験自体は予定通り実施すると言い続けてきた。

 それが、10月31日朝の河井法相辞任劇で一転する。25日の菅原経産相に続き1週間のうちに閣僚2人が不祥事辞職となる中で、「身の丈発言」が尾を引く萩生田文科相に対する野党や世論の攻撃を回避しないと政権そのものが危なくなる――。そんな懸念が政権中枢に湧いてきたのではないか。

 その結果が、わずか24時間後の延期発表となった。これほど迅速な対応は、首相官邸など政権内の極めて高いレベルの意向を感じさせる。

 つまり今回の導入延期ドタバタ劇は、教育的見地からのものではなく、政局の産物以外の何ものでもない。 =つづく

(寺脇研/京都造形芸術大学客員教授)

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