目的は「生産性向上」 教育にも入り込んだ新自由主義の危うさ

目的は「生産性向上」 教育にも入り込んだ新自由主義の危うさ

社内公用語を英語にした楽天の三木谷社長も猛プッシュ(C)日刊ゲンダイ

【アベ政治の食い物に 教育行政の惨状】#5

 これほど準備、議論ともに不足していた中で、どうして安倍政権はこんなにも英語民間試験導入にこだわったのだろうか。

 1979年度以来40年にわたって共通1次試験、センター試験と続いてきた全国一斉入試においては、問題作成も試験実施も採点も、全て公的機関である大学入試センターによって行われてきた。2006年度から実施の英語リスニングも、ICプレーヤーを使う方式まで含め入試センターで対応してきている。

 英語4技能のうち「読む」だけだった試験に「聞く」を導入した際は入試センターに任せたのに、「話す」「書く」が入る今回はなぜ民間なのか。民間試験はこの4技能全部を有機的に結びつけて問い、結果を評価するので総合的な英語力を測れる――。これが理由とされている。入試センターが新たに同様の試験問題を開発するには、コストの問題もあるが、何より、時間を要して改革が遅れるのが痛いというのだ。

 それなら、いっそ英語試験は全て民間に任せたらいいじゃないかという話になる。「読む」「聞く」だけは入試センター作成のマークシート式試験とダブるからだ。

 実際、文科省での検討過程では、その案も有力だったという。しかし、それでは全体を入試センターの責任で行っている試験の英語部分だけを完全に民間に委ねてしまうことになる。これに関しては、受験生や高校、大学の不安が大きく、こんな変則形になったのである。

 もともと民間試験導入推進派には、コストや時間面で合理性があるなら公的機関でなく営利企業も含めた民間に任せればいい、という発想が根底にある。国鉄などの民営化にはじまり、経済性や自己責任を強調する、いわゆる新自由主義だ。

■下村元文科相「生産性向上」が教育の目的

 文科省の内部検討会で民間試験活用を強力に主張した楽天の三木谷浩史会長は、その考え方を代表する経済人だ。また、導入を決定した下村博文元文科相は、一人一人の「生産性の向上」が教育の目的だと語っている。教育という極めて公共性の高い分野にまで、新自由主義を持ち込もうというのである。

 英語4技能を同時に測り、総合的な英語力を身につけてもらうのが、これから大学で学ぶ者にとって不可欠なまでに重要だというのなら、経済格差、地域格差など多くの懸念を抱える既存の民間試験を使うのではなく、じっくり準備して入試センターによる新しい試験をつくればいいではないか。それが本来の教育的配慮というものだ。

(寺脇研/京都造形芸術大学客員教授)

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