経済原理の政治主導…「24年度実施」は再び同じ愚を犯す

経済原理の政治主導…「24年度実施」は再び同じ愚を犯す

2019年国公立大2次試験の会場(C)共同通信社

【アベ政治の食い物に 教育行政の惨状】#7

 国語、数学の記述問題には、民間企業に採点を丸投げすることだけでなく、受験生を混乱させる要素がある。個別大学への出願の目安となる「自己採点」が難しいというのだ。大学入学共通テストの成績は、大学側には2次試験前に届くのだが、受験生本人には4月に通知されるので、自己採点してそれに見合う出願先を考えなければならない。成績によっては2次試験を「門前払い」されてしまうからだ。

 こうした不安を解消するために、文科省は国公立大学に対し、国語記述問題の成績を「門前払い」の判断材料に使わないよう要請すると報道されるなど、にわか対応策に追われているようだ。ドタバタ劇はまだまだ続きそうである。記述問題の採点にベネッセコーポレーションの子会社を選定した根拠は、なんと競争入札。教育的見地と無縁の経済競争原理に基づいて政治主導で拙速導入しようとしたことのツケは大きい。

 英語民間試験に関しては、導入延期を決めた萩生田文科相が、2024年度実施を目指し「今後1年をめどに結論を出す」と述べている。5年以上議論した導入準備が、問題噴出で延期せざるを得ないほどズサンだったというのに、たった1年で結論を出せるのか。20年度実施と初めから時限を切ったのが拙速を招いた愚を、再び犯してしまう可能性は高い。

 この際、共通テストと各大学が行う2次試験との役割分担を、時間をかけて改めて議論してみてはどうか。これまでの大学入試センター試験は、マークシートを採用して公平公正に採点できる方式を使い、受験生全員の5教科の基礎基本学力を測り、大学側に提供してきた。その上で各大学は、自らの開設する学部学科の専門性に沿って必要な学力を2次試験で測る。

 民間試験を導入すれば、センター試験に比べ地域格差、経済格差が大きくなるのは当然だ。英語4技能とか記述式とか、民間の手を借りなければならない種類のものは、各大学がその責任において2次試験に導入すればいい。受験生も、志望する大学からの要求であれば納得しやすいだろう。

 そして新しい共通テストは、出題を工夫してセンター試験の弊害といわれてきた暗記に頼る受験対策では対応できないような問題を用意し、これからの高校教育に求められる「主体的・対話的で深い学び」によって得られる学力を測れるようにすることにこそ全力を注ぐべきだと思う。 (おわり)

(寺脇研/京都造形芸術大学客員教授)

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