大統領選狙い農家救済に動き…トランプは日本に目をつけた

大統領選狙い農家救済に動き…トランプは日本に目をつけた

トランプにとっては大統領再選が第一(C)ロイター

【トランプに握られた日本人の胃袋】#6

 トランプはニューヨーク生まれの典型的なお坊ちゃん。中西部の田舎で泥まみれになって牛や豚、トウモロコシや小麦を育てる農家などに関心がない。親から譲り受けた不動産業を引き継いで言葉巧みに巨万の富を得てきたトランプにはむしろ苦手な相手である。

 にもかかわらず、トランプはなぜ牛肉など米国農産物の日本への輸出に異常なこだわりをみせるのか。それは米中貿易摩擦の直撃を受け、共和党の強固な支持基盤である米国農家が深刻な苦境にあるからだ。

 米国の対中関税の引き上げという制裁に対抗して、中国も大豆などの農産物の輸入関税を大幅に引き上げた。そのスキを狙ってブラジルやロシアが中国に輸出したものだから、結果的に米国内の農家の首を絞めることになった。中国商務部によると、1〜4月の米国産大豆の輸入量は7割、豚肉は5割も減った。そのうえ今年の米国農家は、日本と同じように洪水や高温という異常気象にも見舞われて借金が拡大していった。

 打撃はそれだけではない。米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したことで、お得意さまの日本市場では劣勢が続いている。日本の輸入牛肉の米国シェアは50%台から40%を割り、首位の豪州産との差が開く一方だ。豚肉もカナダなどのTPP参加国に押されつつある。

 もともと、全米農業所得は2018年が660億ドル(約7兆3920億円)で、2013年の1340億ドルから半減しているのだが、それに拍車がかかっている状態といえる。

 さらに、米国内消費者の牛肉離れがあり、畜産農家の悲鳴が聞こえてきそうだ。2020年の大統領選で再選を目指すトランプにとって、これは大問題だ。とくに、肉牛の産地であるテキサス州は大統領選の勝利に必要な選挙人数がカリフォルニア州に次いで多いから、テキサス州を救わないわけにはいかないのだ。

 そこでトランプは最大で160億ドル(約1兆7000億円)もの補助金で、国内農家の歓心を買おうとしたが、農家の損失の穴埋めにもならなかった。発表当初こそ、最大手の米国農業団体連合会は「苦境にある農家に配慮してくれた」と歓迎したが、その一方で、「(あくまでも)収入減少の一部を埋め合わせたものだ」と、不足をアピールしていた。

 トランプはこの苦境を打破するために、日本人の胃袋を人質にとったというわけだ。=つづく

(奥野修司/ノンフィクション作家)

関連記事(外部サイト)