【緊急寄稿・宮田律】米軍は“袋のネズミ” 世界最強の名が泣くだろう

【緊急寄稿・宮田律】米軍は“袋のネズミ” 世界最強の名が泣くだろう

イランがイラク・アサド米軍基地を報復攻撃し、ソレイマニ司令官の写真を掲げ通りで祝うイラン国民(C)ロイター/WANA (West Asia News Agency)

イランがイラクにおける米軍基地2カ所を弾道ミサイルで攻撃した。イランは、トランプ政権による制裁強化、ペルシア湾での米軍の軍備増強と挑発、またソレイマニ司令官の殺害を受けてついに堪忍袋の尾が切れた格好だ。イラン国内でソレイマニ司令官の葬儀に100万人もの人たちが集まるなど反米感情が高まり、それにイラン政府も応ぜざるを得なくなったのだろう。

 中東政治では国民の感情の高まりが政治を思わぬ方向に導くことがある。1967年にエジプトのナセル大統領は、アラブ世界の反イスラエル感情の高揚を受けて、イスラエル南部の港からインド洋に抜けるチラン海峡を封鎖してそれがイスラエルの先制攻撃を招き、壊滅的な敗北を被り、イスラエルによるヨルダン川西岸、ゴラン高原の占領を固定化してしまった。

 イラク駐留米軍の情報が親イランのイラク武装勢力からもたらされていた可能性もあり、攻撃が容易だったのかもしれない。もちろん、イラクは地理的にも近接していてイランの弾道ミサイルが命中しやすいということもある。イラクに展開する米軍の規模は、5000人余りだが、表向きの駐留理由はIS掃討のためにイラク軍を訓練するためとしている。その駐留米軍は親イランの武装勢力とイランの軍事的脅威に囲まれ、人質というか“袋のネズミ”のような状態に陥りつつある。

 トランプ大統領は、米軍は世界最強の軍隊であることを誇るが、しかし米軍にはもろい側面もある。1983年にレバノン・ベイルートに駐留した米軍は、親イランの武装勢力の自爆攻撃を受け240人余りが犠牲になると、あっという間に撤退していった。また、ソマリアでも1993年に18人の米兵が殺害されると、即座に引き揚げていった。イランとすれば、米兵に犠牲を出すことによって、米軍のこの地域からの撤退を図りたいのだろう。また、イランは、トランプ大統領の米国内での評価を下げて、彼の大統領選挙での敗北を考えているのかもれしれない。民主党の大統領が当選すれば、イラン核合意に米国が復帰する可能性も出てくる。米兵に犠牲が出れば、トランプ大統領の求心力が低下するとイランが踏んだとしても不思議ではない。

 イランと米国の和平を調停できるのは、両国と良好な関係もっている国しか考えられない。核合意に留まるフランス、ドイツ、あるいは北欧諸国、さらには日本にもその資格がある。日本外交は公平な立場で和平の調停を行えばその外交的評価は高まり、イスラム世界をはじめとする国際社会での信頼を得られるだろう。しかし、米国に一方的に軍事的に加担するようだと、イランをはじめ、イスラム過激派からも日本が標的とされる可能性もある。外交の賢明な舵取りがいまほど求められている時はない。

(宮田律/現代イスラム研究センター理事長)

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