英国政府が想定する最悪事態「国民8割感染 死者50万人」の衝撃

英国政府が想定する最悪事態「国民8割感染 死者50万人」の衝撃

エリザベス女王も手袋で…(C)ロイター

【新型コロナウイルス パンデミック前夜】#5 イギリス

 先月、ロンドン市長選の候補者の発言が話題になった。ベイリーという候補がツイッターで日本で新型コロナウイルスが蔓延していることに触れ、「ロンドンは求めがあればオリンピックを再び開催する用意ができている」と書き込んだのだ。2012年のロンドン五輪の経験とインフラがあることを誇示したわけだが、実は英国のウイルス事情は深刻だ。

 スコットランドを含めて全国的に感染が拡大し、ジョンソン首相の指揮の下、医療と安全保障の専門家チーム「ウオールーム」が設置された。その背景には同国の保健省がまとめた報告書がある。「COVID―19:理性的な最悪のシナリオ」と題したこの書類には「感染が雪だるま式に拡大する可能性があり、現時点は初期段階にすぎない。今後2、3カ月以内に爆発的に広まる恐れがある」と警告した上でこう結論付けている。

「大半の感染者は軽症で終わるだろうが、致死率は3%程度が予想される。最悪の場合、英国民の8割が感染し、50万人が死亡する」

 ロンドン王室カレッジのファーガソン医学博士も「最も恐るべき事態が進行中だ。英国人50万人が死んでも不思議ではない」と発言している。

 これらの衝撃的な内容に、保健省は「全国11カ所の指定病院と100カ所の診療所で万単位の検体採取を行い、感染拡大の予防に努める」と表明。引退した医師や看護師らの医療従事経験者と軍にスタンバイを指示できるよう新たな法律を整備する方針だ。ジョンソン首相は「警察は、よほどの重犯罪でない限り感染防止を優先せよ」と発言した。コソ泥や痴話ゲンカなどは後回しにして凶悪犯の新型コロナウイルスをしょっぴけということらしい。

 何しろ、エリザベス女王ですら人と会うときに手袋をするという非常事態。当然ながら、エンターテインメントへの影響も大きく、映画「007」がピンチに立たされている。

 5年ぶりの新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」がやっと完成。4月3日にプレミアム上映会を行う予定だったが、ジェームズ・ボンドのファンクラブ「MI6―HQ」が「夏以降への延期」を申し入れたため、ここにきて製作側が「11月まで延期する」と発表した。日本公開は現在調整中だ。

 新型コロナの前には不死身のボンドも形無しということか。

(国際政治経済学者・浜田和幸)

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