東京五輪1年程度延期に透ける“安倍ファースト”「22年夏案」が消えた真相

東京五輪1年程度延期に透ける“安倍ファースト”「22年夏案」が消えた真相

何としても安倍政権下で実施したい(電話会談を終え、取材に応じる安倍首相)/(C)共同通信社

新型コロナウイルスの影響で、東京五輪の開催延期が決まった。マリオに扮してまで盛り上げてきた安倍首相は24日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と電話会談し、「1年程度の延期」を提案。バッハ会長もこれに同意し、2021年夏の開催が濃厚になった。取り沙汰されていた「今秋案」「22年夏案」はなぜ消えたのか。“アスリートファースト”は口先だけで、“安倍ファースト”の思惑が見え隠れする。

 安倍―バッハ会談には大会組織委員会の森喜朗会長、開催都市の小池都知事、橋本五輪相らも同席した。会談後にぶら下がり取材に応じた安倍首相によると、安倍首相の提案にバッハ会長は「100%同意する」と快諾。IOCはその後の臨時理事会で延期を満場一致で承認した。

 安倍首相は当初、予定通りの開催に固執してきたが、23日の参院予算委員会で「完全な形での実施が困難な場合、延期の判断も行わざるを得ない」と方針転換。代表選考など選手への影響を考慮し、延期は1年以内が望ましいと“アスリートファースト”をアピールしているが、フタを開けてみればやっぱり“安倍ファースト”だった。

「IOCが開催判断の期限としていた5月下旬までの新型コロナ終息を目指してきましたが、世界のフェーズが変わってしまった。感染拡大の中心地となっている欧州をはじめ、米国や東南アジア、アフリカの現状を見る限り、五輪を開催できる状況にはありません。延期は五輪史上初ですが、パンデミックで名目は立った。ただ、3〜4カ月延期の秋開催はかなり厳しい。IOCと32年まで独占中継契約を結び、巨額の放映権料を支払っている米NBCの意向で、夏季五輪は夏開催が大前提。そうなると、官邸には1年先送りの21年夏しか選択肢はない。最初から22年夏開催は選択肢になかった。というのは、総理の自民党総裁任期は21年9月末までだからです。総理が誘致を勝ち取った東京五輪なのですから、何としても安倍政権の下で実施したいというのが官邸のスタンスなのです」(与党関係者)


森氏ら組織委は抵抗も完敗

 一方、森氏を中心とする組織委サイドは22年への延期、北京五輪との夏冬同時開催を模索していた。口火を切ったのが、組織委理事の高橋治之氏(元電通専務)だ。米紙ウォールストリート・ジャーナル(10日付電子版)で「来年のスポーツイベントの予定はおおむね固まっているため、延期の場合は2年後のほうが調整しやすい」とアドバルーンを揚げていた。24日も報道陣の取材に、「アスリートファーストより人類ファースト。1年後でも感染が終息していない恐れがある。再延期は難しいため、延期は2年後にすべきだ」と持論を展開。30日の組織委理事会でも意見すると気炎を上げていた。

 安倍首相が21年夏開催にカジを切ったのは、自分が吐いた大ウソをごまかすためでもある。誘致の際、福島原発事故の汚染水について「アンダーコントロール」と胸を張っていたが、汚染水は絶えず発生。浄化処理後も放射性物質のトリチウムは残ったまま。汚染水の貯蔵タンクも増え続け、東電によると、22年夏にタンク用地は満杯になる見通しだ。22年夏開催では時期がピタリと重なり、世界中から突き上げられるリスク大なのである。

 五輪憲章は「スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」とうたっているが、看板倒れも極まれりだ。

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