「検察庁法改正案」強行採決断念の裏に“官邸vs検察”バトルと党内権力闘争

「検察庁法改正案」強行採決断念の裏に“官邸vs検察”バトルと党内権力闘争

検察庁法改正案の今国会成立を断念し、報道陣の質問に答える安倍首相(黒川弘務東京高検検事長=右)/(C)共同通信社

怒涛の「ツイッターデモ」が政治を動かした――。三権分立と民主主義の破壊につながる「検察庁法改正案」。政府与党は今週中の採決で強行突破を図ろうとしていたが、急転直下、18日安倍首相自ら「断念」を表明した。その裏には、想像を絶する世論の離反に加え、検察との攻防や党内権力闘争の激化が見え隠れする。いよいよ「安倍1強」は終焉だ。

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「国民の皆さまの理解なくして前に進めていくことはできない」

 安倍首相は18日夕方、報道機関の取材にこう答えて、検察庁法改正案の今国会成立を見送った理由を説明した。短いコメントに「国民の皆さまの理解」という言葉が3回もあったのは、それだけ厳しい世論のうねりを痛感しているからだろう。

「断念」の判断に影響を与えた筆頭は、週末の世論調査だ。内閣支持率は、朝日新聞で前月比8ポイントの大幅下落(41%→33%)。NHKでも一昨年6月以来「支持」と「不支持」が逆転した。与党議員の事務所には「反対」を伝える有権者からのメールや電話が殺到し、強行採決すれば造反が続出しかねなかった。他人事のような山口公明党代表のツイートが炎上したことも痛手だった。

■1億5000万円を巡る”手打ち”があったのか

 もっとも、別の理由も囁かれている。改正案を巡っては「安倍官邸 vs 検察」のバトルがあった。河井克行衆院議員と案里参院議員夫妻の公選法違反(買収)容疑での立件に向け検察の捜査が大詰めを迎えているが、夫妻が地元議員らに配ったカネの原資は自民党本部からの1億5000万円だった可能性がある。安倍首相にすれば、夫妻の逮捕は避けられないとしても、党本部のガサ入れや自分を含めた執行部に捜査が及ぶのだけは避けたいに違いない。

「検察OBが法案反対の意見書を出すなどバトルは過熱化していた。『断念』したことで、とりあえず、安倍政権が検察人事に介入することはなくなった。黒川東京高検検事長が今夏に検事総長に就任することは困難になった。黒川氏自身が就任を諦めたのか。官邸と検察との手打ちがあったのか」(自民党議員)

 さらに、党内権力闘争で安倍首相が追い詰められた結果だという見方も。政府与党が審議中の法案を引っ込めるのは異例中の異例。コロナ対策の「現金10万円給付」の閣議決定やり直しに続く大失態だ。「10万円の時と同様、二階幹事長と菅官房長官、そこに公明党も加わって、安倍首相のはしごを外した。ポスト安倍を睨んだ動き」(別の自民党議員)という声も聞こえる。

 政治評論家の野上忠興氏が言う。

「10万円給付に続く、異例の方針転換です。通常、1つでも内閣がガタガタになるような失態を2つ重ねた。いずれも内閣総辞職に値する失政。安倍政権が限界にきていることが端的に表れたのだと思います。幹事長と官房長官が首相に距離を置き、政権基盤の弱体化が加速している。『安倍1強』は崩壊しました。安倍首相はコロナ対策に一定のメドをつけたところで、身を引くべきです」

 モリカケや桜疑惑から逃げた安倍政権も、今度は終わりが見えた。

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