公衆衛生行政に関心なし…小池都知事はただ目立ちたいだけ【新型コロナ 小池都政の怠慢を暴く】

公衆衛生行政に関心なし…小池都知事はただ目立ちたいだけ【新型コロナ 小池都政の怠慢を暴く】

報道陣の囲み取材に応じる小池百合子都知事(C)日刊ゲンダイ

【新型コロナ 小池都政の怠慢を暴く】#3

 保健所が大きく注目されるのは何十年ぶりのことだろう。そう思うのは私が昔、保健所職員だったからである。新型コロナウイルスの感染が拡大している今は連日、メディアで「保健所」が連呼されているが、その実態について詳しく知る人は少ないだろう。ましてや過去からの経緯を把握している人はなおさらである。

 30数年前、私が都庁に就職して初めて配属されたのが保健所だった。正式には東京都武蔵野保健所予防課配属。命じられたのは母子保健、母親学級、乳児の6、9か月検診、三歳児健診などの担当だった。所長はおじいちゃん医師、予防課長は女医さん、周りは保健婦(保健師と呼ばれるのはまだ先のこと)だらけの「女性の園」だった。

 当時、23区の保健所は東京都から特別区に移管されて10年が経とうとしていたが、多摩地域の保健所は都の直営。ほぼすべての自治体にひとつの保健所が配置され、例外として対人保健サービスに特化した保健相談所というサテライトが小規模な自治体に置かれていた。

 東京都が公衆衛生の拠点を都内全域にきめ細かく張り巡らせていたのは、ひとえに国民病と恐れられた結核を予防するためである。そして、保健所には必ずレントゲン技師が1人配置され、胸部レントゲン撮影の専用室が備えられていた。

 私が保健所職員だったころには既に結核予防の輝かしい歴史は薄れ、母子保険、精神保健、さらにはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の初期段階では匿名検査の窓口としての役割を担っていた。そして、平成の30年間で多摩地域の保健所は行革の荒波に飲み込まれ段階的に統廃合が進められた。だから、私が働いていた武蔵野保健所は今や跡形もない。中央線を挟んだ南側の三鷹市にも調布市にも保健所はない。これらの市を管轄するのは多摩府中保健所だ。

 この保健所は、武蔵野、三鷹、府中、調布、小金井、狛江の5市(!!)を受け持っているのだから、忙しくなるわけだ。

■都の保健所は数もマンパワーも足りない

 23区も事情は変わらない。たとえば90万人超の人口を抱える巨大自治体・世田谷区であっても保健所は1カ所のみで、あとは保健福祉センターが5カ所あるにとどまる。これでは保健所の数もマンパワーも足りるわけがないのだ。

 つまり、こういうことだ。感染症の脅威は過ぎ去ったと油断して戦線を縮小した矢先、新型コロナに間隙を突かれて攻撃されている。これが偽らざる東京の現況なのである。存在意義が忘れられ手薄になった保健所が、新型コロナの感染拡大で注目を浴びるとは、なんと皮肉なことであろうか。

 そもそも保健所の多忙ぶりは今に始まった話ではない。東京都内で新型コロナが初めて確認されて以来、ずっと続いている。にもかかわらず、小池知事はこの数カ月間、保健所に対してマトモな支援策を取ってこなかったのだ。

 おそらく小池知事は、新型コロナが蔓延するまで、保健所の存在すら知らなかったのではないか。自分がマスコミに大きく取り上げてもらえるような場所を視察場所に選んではカメラに収まっていたが、保健所が何をしている部署なのか、感染症予防法上の位置づけがどうなっているのかなど、意識したことさえなかっただろう。それよりも、頭にあるのは「国際金融都市」や「ソサエティ5・0」、「デジタルトランスフォーメーション」らしい。

 1400万人都民を預かる知事であれば、真っ先に考えるべきは都民の健康と生命を守ることだ。ところが、今の小池知事の頭の中にあるのは、目立ちたいことだけ。やるべきことは後回しなのである。

 都民の命を守る公衆衛生行政に関心のないトップを仰いだ自治体の不幸は、ここから始まっていたと言わなければならない。=おわり

(澤章/東京都環境公社前理事長)

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