神奈川・湯河原町議会 滞納者リストを巡る異様な「懲罰動議」

神奈川・湯河原町議会 滞納者リストを巡る異様な「懲罰動議」

温泉観光地として知られる神奈川県湯河原町(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュース深読み】

「近場の温泉地」として人気の神奈川県湯河原町の町議会で、信じ難い懲罰動議騒動が起きている。懲罰にかけられているのは土屋由希子議員(38)。「9月7日開催の本会議で、秘密会の議事を公開した」というもの。問題となったのは、次の質問である。

 湯河原町の全滞納者の名簿が町議会議員に配布されており、名簿は回収されていない。これは問題ではないのか――。

 名簿が提供されていたのは町税等徴収対策強化特別委員会。非公開での会議「秘密会」での共有を前提に町が開示。そういう意味では規定(湯河原町議会会議規則第92条第2項)に反しているのかも知れないが、そもそも町税や上下水道料金などの滞納者の氏名や法人名、住所、滞納額、処分などが記載された名簿を、なぜ町議が必要とするのか。

 滞納者にはそれぞれに事情があり、取引先、金融機関はもちろん、友人知人にも知られたくない。そんな重要な名簿が回収されていないとはどういうことか。問題の本質はそちらだろう。

 町議会関係者が言う。

「冨田(幸宏)町長は現在4期目で、神奈川県町村会長も務める大物。議会14人のうち多数派は保守系無所属の冨田派です。そんな旧弊の議会に、土屋議員は『ママの力で湯河原を元気に!』と訴えて今年3月、初出馬でトップ当選。冨田町政に堂々の注文をつけ続けている。それが面白くないのでしょう」

 確かに、ツイッター、インスタグラムなどSNSを多用する土屋氏の情報発信力はずぬけており、今回の懲罰特別委員会の弁明を求める事項の中に、「SNS上、秘密会の議事を他に漏らした」というものもあった。

 とにかく土屋議員の「在り方」が嫌いなのである。

 しかし、名簿の存在は過去の議事録でも記載されており、<資料(名簿)は、持ち帰りや保管が難しければ、当課で保管>という文字がある。

 それでも町議会は9月18日、懲罰特別委員会を設置、25日、懲罰の必要性の有無などを審議、29日の本会議で処分が決定される。

 懲罰には、議場における戒告、陳謝、3日以内の出席停止、除名などがある。

 今回は、「議場での陳謝」となりそうだが、土屋氏は「私の発言は町民の個人情報を守るためのもの」と意気軒高だ。

「今回、個人情報の議会への流出と管理のずさんさを問題にした私を懲罰動議にかけたのは、湯河原町や議会にとって、不都合な真実だったから。29日の議会終了後、記者会見を開いて、質問の公益性を訴え、議会の隠蔽体質を指摘したい」

 SNSなど情報ツールが多種多様になったからこそ、個人情報保護は厳重でなければならない。それを知る土屋氏と「秘密会」で隠しおおせると思っている情報リテラシーを欠く議員――。非がどちらにあるかは、言うまでもあるまい。

(伊藤博敏/ジャーナリスト)

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