コロナ禍だから響く「田中角栄の7金言」元秘書が明かす

コロナ禍だから響く「田中角栄の7金言」元秘書が明かす

学歴もなく苦労したから人の痛みが分かる(田中角栄元首相)/(C)日刊ゲンダイ

2020年はコロナに直撃された一年だった。一体、このコロナ禍はいつ終わるのか。出口が全く見えない。国が災難に見舞われ、国民が不安を強めている時こそ、リーダーの力量が試される。もし、田中角栄が生きていたら、国民に何を訴え、何を考え、どんな行動を起こしていたのだろうか――。角栄の金言を振り返るとともに、秘書を23年間務めた朝賀昭氏に話を聞いた。

 ◇  ◇  ◇

「子供が10人いるから羊羹(ようかん)を均等に切るってのは共産主義。自由主義は別だよ。羊羹をチョンチョンと切ってね。一番年少の子にでっかい羊羹をやるんだ」――。オヤジさんがよく言っていたこの言葉の意味は、明日食うのに困っている人にこそ手を差し伸べるべきだ、ということです。

 コロナ禍では、非正規や女性など、弱い立場の人たちほど苦しみ、命を絶つ傾向が強いようです。「自分だけ置いていかれているんじゃないか」「もう生きていても楽しいことはない」といった絶望感と不安感にさいなまれてしまうのでしょう。

 オヤジさんなら、一番困っている人に一番手厚く予算を使うでしょう。「国難の時は、国はなんぼ借金をしてもいい」っていう発想に立ち、気が遠くなるような借金をしたのではないか。借金は稼げば返せる。しかし命は一度失えば人の人生が終わってしまいます。オヤジさんなら「でっかい羊羹」をいち早く弱い立場の人に配ったはず。オヤジさんは、学歴もなく、本当に苦労した人でした。自分が苦労しているから人の痛みがよく分かる。苦労しない人は、「頭」では人の苦労が分かっても、実体験として湧かない。困っている人、弱っている人に手を差し伸べるのは、政治家として当たり前ですよね。

 いま何より必要なのは、国民へのメッセージです。オヤジさんだったら「日本中が苦しいんだから、皆、心配しなくていい。焦らないでいこうや。今年と来年はもう休憩をしよう」「金のことは心配しなくていい。国がいっぱい借金するから」「働ける人は働きなさい」――というようなメッセージを送ると思います。まず、国民の不幸を取り除こうと考えたはずです。

 だから、Go To トラベル事業を巡って、東京都の小池知事が「国の責任」などと繰り返していたことについても、うちのオヤジさんだったら大喧嘩になったでしょう。「都だ国だなんて、おまえは何を言っているんだ?」と。日本中が一つになって国民の恐怖とコロナ禍を克服しなきゃいけない時に、「お国がどうとか、都がどうとかバカなことを言っているんじゃない」「君は何のために政治をやっているんだ?」くらいのことを言うと思いますよ。

できない約束はしなかった

 国民にメッセージを発する時も、ハッキリとした性格だったから、手練手管を使わず、「できるものはできる」「できないものはできない」と分かりやすい言葉を使ったでしょう。オヤジさんは、できない約束はしなかった。陳情客にも「やるだけやってみるけどな、これは難しいぞ」と伝えて、困難なことをさも簡単にできるように期待を持たせるようなことはしませんでした。だから、陳情を実現できなくても恨まれることもありませんでした。

 オヤジさんは本当に「素直な人」で、人の話に耳を傾ける人でした。このコロナ禍だったら、専門家の意見を尊重したと思う。政治家は素人ですからね。専門家の意見を聞いて、決断は政治家がする――それがスタイルだった。

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、戦国大名・松永久秀役の吉田鋼太郎さんに「道を教える者をもたぬ者は闇を生きることになるぞ」というセリフがありましたが、今の政治家がまさにそれ。教えてもらえばいいんです。

 ◇  ◇  ◇

▽朝賀昭(あさか・あきら)1943年、東京都生まれ。都立日比谷高時代に田中角栄の知己を得て、中央大法学部を卒業した66年春に正式に秘書となる。田中派秘書会を束ね、党派を超え多くの政治家との交友を続け、現在に至る。

田中角栄の7金言

@「子供が10人いるから羊羹を均等に切るってのは共産主義。自由主義は別だよ。羊羹をチョンチョンと切ってね、一番年少の子に一番でっかい羊羹をやるんだ」

A「我と思わん者は遠慮なく大臣室に来てください。そして、何でも言ってほしい。上司の許可を得る必要はありません。できることはやる。できないことはやらない。しかしすべての責任はこの田中角栄が背負う。以上」

B「選挙で人の悪口を言っても札(票)は増えんぞ。勘違いするなよ。敵をたくさんつくってどうする。槍衾(やりぶすま=大勢の者が槍を隙間なく突き出して構えること)になるぞ」

C「(政治とは)事をなすことだ」「政治家は学者や評論家とは違う。実践するために行動することだよ」「いつまでもあると思うな親と金。ないと思うな運と災難」

D「有名大学の学長とか教授などそういう人ばかりに上級叙勲をしている。けしからん。人間の基本をつくるのは、一番教育の難しい小学校の教員にこそあるんだ。そこのいわゆる幼年期の教育を恵まれない環境でやっている先生に、最大の敬意を表して最高の環境をつくってやらなきゃダメだ。そうならなきゃ日本は良くならん」

E「一分考えて答えの出ないものは、一生かかっても答えは出はせんよ」

F「そこに困った人がいて、何かをしてやろうという気持ちが起きない人間は政治家などになってはいけない」「国民に対して情を持たない者は、政治家になるべきではない。政治家はなりたくてなるものではない。政治家になって何をするかというものを持ってない者は、政治家になるべきじゃないんだ」

関連記事(外部サイト)