議論尽くされず=安倍政権、大統領にらみ承認急ぐ―日米貿易協定

 4日に国会で承認された日米貿易協定は、安倍晋三首相にとって今国会の最優先議案だった。米大統領選を来秋に控えるトランプ大統領が「実績」を切望していたことが背景にある。ただ、政府・自民党が会期内承認ありきで審議を進めた印象は否めず、中身の議論が尽くされたとは言えない。

 協定が参院外交防衛委員会で可決された3日夜、首相は交渉担当の茂木敏充外相と東京都内で会食。2人は「よかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 首相が気にかけてきたのは来年1月1日という日付だ。米国と異なり、日本では協定発効に国会の承認が必要。にもかかわらず、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が9月の日米首脳の最終合意の直後、「協定発効は来年の1月1日になる」と公言していたからだ。

 国会審議では日本車の関税の扱いが最大の焦点となった。日本政府は、撤廃は確約されていると説明し、これを織り込む形で実質GDP(国内総生産)の押し上げ効果は0.8%とアピールしていた。

 ただ、合意文書にあるのは「関税撤廃に関してさらに交渉する」との文言だけ。野党は「政府の説明は単なる希望だ」として撤廃の根拠を明確にするとともに、日本車の関税を撤廃できなかった場合の経済効果を示すよう求めた。「日本車に追加関税を課さないとトランプ氏に確認した」とする首相の説明も疑い、議事録の開示を迫った。

 しかし、政府はいずれにも応じなかった。

 首相は今国会では国民投票法改正案の成立より、日米貿易協定の承認を優先させる意向を周辺に漏らしていた。協定発効が来年1月1日に間に合わなければ、トランプ氏が在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の交渉などで対日要求を強めかねないとの懸念もあったとみられる。

 国民民主党の羽田雄一郎元国土交通相は4日の参院本会議で反対討論に立ち、「日米貿易協定はウィンウィンではなく、日本完全敗北の内容だ」と指摘。「実態を必死に隠し続け、必要最低限の情報提供さえ拒み続けた政府の姿勢は断じて許されない」と厳しく批判した。 【時事通信社】