政権の強行方針が頓挫=支持率急落を憂慮―「特例」維持、火種残す・検察定年延長

政権の強行方針が頓挫=支持率急落を憂慮―「特例」維持、火種残す・検察定年延長

自民党役員会に臨む安倍晋三首相(中央)ら=18日午後、国会内

 検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案は18日、安倍晋三首相が急きょブレーキをかけ、今国会成立を目指す政府・与党の当初方針が覆った。インターネット上で高まる著名人らの批判に加え、身内の検察幹部OBからも反対論を突き付けられ、強行すれば政権への打撃は計り知れないと判断した。世論を沈静化させ、秋の臨時国会で仕切り直したい考えだが、問題とされた特例条項は撤回せず、火種は残ったままだ。

 ◇「国民が反発」二階氏進言

 首相は18日、自民党の二階俊博幹事長と首相官邸で会談し、「国民の理解」が得られていないと認め、今国会成立を断念することで一致。二階氏に近い閣僚経験者によると、二階氏が「国民の反発が強い」とみて先週末、先送りを官邸に働き掛け、首相が最終判断した。首相は先月、異例の2020年度補正予算組み替えに追い込まれたばかり。重要法案の成立断念はこれに続く痛恨の失点と言えるが、閣僚経験者は「このまま突き進んだ方がダメージが大きい」と指摘した。

 自民、公明両党は今国会成立を譲らず、自民党国対幹部も「一気にやった方がいい」と主張していたが、先週末に行われた朝日新聞の世論調査で、内閣支持率が4月の41%から33%に急落した。首相に近い政府関係者は「支持率の下がり方がひどい」と嘆いた。自民党内からも、改正案について「国民に評判が悪い。支持率に響いている」(竹下派幹部)、「突っ込むとさらに下落する」(二階派ベテラン)と慎重論が出始めていた。

 改正案に対しては、首相と距離を置く自民党の石破茂元幹事長が「国民の納得、理解を頂ける状況とは全く思っていない」などと繰り返し批判。成立を強行すれば政権が体力を失う一方、来年秋の首相の党総裁任期切れをにらんだ後継争いの本格化を前に、世論の支持が石破氏に集まりかねない情勢でもあった。

 ◇黒川氏昇格も焦点

 野党は改正案について、黒川弘務東京高検検事長の閣議決定による定年延長を「後付け」で正当化していると批判。政府は定年延長する基準を明示できず、説得力のある反論ができていない。首相は15日のネット番組で、黒川氏が政権に近いとみられていることに「全く事実ではない。2人でお目にかかったことも個人的な話をしたことも全くない」と説明したが、流れを変えられなかった。

 二階派ベテランは「黒川氏の問題とは別なのに、黒川氏のための法改正だという誤った理解が広がった」と悔やんだ。黒川氏を実際に検事総長に昇格させるかも、今後の焦点となりそうだ。

 ただ、政府・与党は、内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能にする特例条項は、野党の削除要求を突っぱね、堅持する方針。官公労の意向を背景に、立憲民主党などが求める国家公務員法改正案の先行処理にも応じない考えだ。首相周辺は「秋に先送りしても、またもめる」と懸念する。

 立憲の枝野幸男代表は18日の党会合で「検察官の恣意(しい)的な役職延長をできる仕組みは切り離すという最終ゴールに向けて、さらに頑張っていきたい」と強調。国民民主党の玉木雄一郎代表はツイッターで「官邸の都合で法律を作り官邸の都合で見送る。事実なら立法府を軽視した話だ」と批判した。 【時事通信社】