イージス停止「理解に苦しむ」=河野克俊・前統合幕僚長―ポストコロナの安保を問う

イージス停止「理解に苦しむ」=河野克俊・前統合幕僚長―ポストコロナの安保を問う

インタビューに答える河野克俊前統合幕僚長=7月14日、東京都港区

 ―陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入決定時の統幕長だ。

 北朝鮮がミサイルを活発に撃ち出した2016年の日本のミサイル防衛体制は、イージス艦と地上配備型迎撃ミサイルパトリオット(PAC3)による二段階だった。北朝鮮情勢の緊迫化は「今そこにある危機」という状況で、「本当にこのままの体制で大丈夫か」という議論が起きた。そこで「高高度防衛ミサイル(THAAD)」との間で選定をし、17年12月に陸上イージスの導入が決まった。

 ―北朝鮮情勢はその後落ち着いた。

 いまだに北朝鮮は1発の核もミサイルも破棄していない。核弾頭数は増え、ミサイル技術も高度化した。北朝鮮の脅威は本質的には何も変わっていない。

 ―ブースターを演習場内に100%落とすことができないというのが計画停止の理由だ。

 導入決定時にブースターの問題が議論の中心になった記憶はない。何より優先すべきは核ミサイルから国民を守ることだ。防衛省の地元説明は不手際が続いた。誠実さに欠け、本当に反省しなければならないが、ブースターを理由に停止するのは理解に苦しむ。代替案としてイージス艦を増やすという話があるが、ミサイル防衛の強化に直接つながるかと言えば、そうではない。

 ―敵基地攻撃能力保有の是非が議論されている。

 攻撃力は持つべきだ。ただ、長距離ミサイルを持てば敵基地を攻撃できるのかと言えば、そんな簡単な話ではない。情報網や指揮管制の整備、宇宙、サイバー、電磁波での能力強化など、今の体制を大きく転換しなければいけない。時間は相当かかる。また、公明党にも相当の抵抗感がある。陸上イージス導入よりも、もっと大きな政治的エネルギーが必要になるのではないか。

 ―日米の「盾」と「矛」の関係も変わる。

 日本は戦略的守勢を絶対に崩してはならない。しかし、国民を守らなければいけないのだから攻撃力は必要だ。一方、矛を担う米国にも米国の都合がある。日本の担う矛は、日本を守るために必要なもの、例えばミサイル防衛に限定していいのではないか。

 ―新型コロナウイルス感染拡大を機に、中国の動きが活発だ。

 中国は米国を超えようという意図を明確にしており、米国は中国を全力で抑えにかかるのではないか。この構図は変わらないだろう。

 河野克俊氏(かわの・かつとし)77年防大卒。海上幕僚長、統合幕僚長を経て19年川崎重工業顧問。65歳。神奈川県出身。 【時事通信社】