公明、菅首相後押しを期待=山口代表現地入り、対応後手の岸田氏窮地―広島3区

 次期衆院選の広島3区をめぐり、公明党が斉藤鉄夫副代表に候補者一本化を図ろうと、自民党への働き掛けを強めている。かねて関係の近い菅義偉首相や二階俊博幹事長の後押しを期待した動きだ。一方、広島を地盤とする自民党岸田派会長の岸田文雄前政調会長は、公募手続きを進める地元県連とともに独自候補の擁立を主張。ただ、対応が後手に回り、窮地に追い込まれつつある。

 「うちは斉藤を出します」。公明党の山口那津男代表は16日、首相に電話し、斉藤氏の擁立方針を伝えた。19日の党中央幹事会で公認を決定すると、直後に山口氏が首相と会って報告。首相はうなずきながら聞いていたという。山口氏は22日、3区内にある広島市安佐南区を訪問し、斉藤氏とともに党所属の地方議員や支持者らと懇談する。

 公明党が斉藤氏の擁立に動いたのは、広島3区を地盤とする元法相の河井克行被告と妻の案里被告(ともに自民党離党)による公職選挙法違反事件がきっかけだ。支持母体の創価学会から「もう自民党は支援できない」と突き上げられ、自公関係の亀裂を覚悟で決断した。

 広島は、岸田派にとって岸田氏ら所属議員6人を抱える「牙城」。公明党はこの状況を逆手に取り、岸田氏と疎遠な首相らを味方に付け、「公明VS岸田派」の構図に持ち込む戦略を描く。

 既に、党幹部が岸田氏に「斉藤氏を支援しないなら、全国の岸田派議員を支援しない」と通告。さらに、派閥議員と個別に接触し、「調整の行方次第では対抗馬を立てる」と揺さぶっている。

 これに対し、岸田派は「派閥つぶしだ」(幹部)と猛反発。岸田氏は19日夕、二階氏と党本部で会談し、「斉藤氏の擁立を認めれば、悪い先例ができる」と徹底抗戦を訴えた。

 もっとも、岸田氏の対応には、党内に「遅過ぎる」との不満もくすぶる。二階氏への直談判は、山口氏が首相に公認決定を伝えた数時間後。そもそも、10月初めに公明党から擁立の打診を受けたにもかかわらず、「難しい」と回答したのは11月初めで、同党幹部は「1カ月も音沙汰がなかった」と不信感をあらわにした。

 衆院議員の任期満了まで残り1年弱。公明党の選挙協力を当てにする同派の中堅・若手からは「もう譲るしかない」との弱音も漏れる。一方、地元県連は「公明は絶対に許さない」と態度を硬化させており、岸田氏は板挟みの状態だ。

 岸田氏は来年の党総裁選への出馬を目指している。閣僚経験者の一人は「広島3区の問題をうまく収拾しなければ岸田氏は終わる」と指摘した。 【時事通信社】