森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 核ミサイルは防げるのか

 9月9日、北朝鮮が5度目の核実験を強行した。北朝鮮は、今回の核実験によってミサイルに搭載可能な核弾頭の開発に成功したと主張しており、米国もその可能性を認めている。
 また、その核実験に先立つ9月5日には、北朝鮮がノドンとみられるミサイル3発を、ほぼ同時に北海道・奥尻島沖の排他的経済水域(EEZ)に撃ち込んだ。
 日本が北朝鮮からの核ミサイル攻撃の脅威にさらされたことが確実になる中で、政府はミサイル防衛システムの強化を打ち出している。例えば、複数のミサイルが飛んできたら、いまのイージス艦の数では迎撃できないから、増強が必要だと言うのだ。

 しかし、事態を冷静に考える必要がある。いまの日本のミサイル防衛は、大気圏外まで打ち上がったミサイルをイージス艦から発射するSM-3で撃ち落とすのと、それが不調に終わった場合に、大気圏に再突入してきたミサイルを地上からPAC3で撃ち落とすという二段構えだ。
 しかし、北朝鮮が撃ったミサイルが、日本に着弾するまでの時間は10分たらずだ。その時間でSM-3による迎撃が本当にできるのだろうか。

 例えば今年6月、日米韓3カ国が、北朝鮮のミサイルを迎撃するための初の合同軍事演習を行った。日米が行ってきたミサイル防衛分野の訓練に韓国が加わったのは初めてだが、行った場所はハワイ沖で、ミサイルの脅威にさらされている日本海ではないのだ。
 一方、PAC3の方は、もともと射程距離が20キロ程度しかない。重要拠点を守るための迎撃ミサイルなので、このミサイルで広範囲を守ることは、もともと不可能なのだ。しかも、核弾頭が搭載されたミサイルにPAC3を使用できるかどうかも疑わしい。迎撃すれば、放射能を拡散させてしまうからだ。

 さらに問題なのは、そもそも政府と自衛隊は、今回のミサイル発射を即座に認知できていたのかということだ。
 北朝鮮のミサイル発射は、発射直後に「早期警戒情報伝達システム」を通じて、在日米軍から防衛省に連絡が入ることになっている。今回それがあったのかどうかは、明らかになっていない。少なくとも、着弾のリスクがあった北海道民には、何ら警告が与えられていないのだ。もし、発射探知ができないのであれば、いくら迎撃態勢を強化しても無意味なことは明らかだろう。

 いまの時点でミサイル防衛が十分できないのであれば、必要な対策はたった一つ。北朝鮮に撃たせないようにすることだ。
 政府は、今回の核実験を受けて、北朝鮮への経済制裁を強化するという。しかし、これまでの厳しい制裁が効果を発揮していない理由は、中国と北朝鮮の間で密貿易が行われていること、そして北朝鮮の資金調達を可能にしているタックス・ヘイブンの存在だ。
 だから、中国と丁寧な外交をする中で、北朝鮮への圧力を高めてもらうことと、タックス・ヘイブンへの資金流出を徹底して封じ込めることが必要なのではないか。

 戦後の日本は、防衛費の負担が比較的小さかったことで高度成長を可能にしたと言われる。ここで安易に防衛費を増やせば、北朝鮮の思うつぼだ。

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