森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 始める前に終わった蓮舫民進党

 9月15日に行われた民進党の代表選挙臨時党大会で、蓮舫候補が勝利して、新代表に就任した。蓮舫氏の獲得ポイントは503で、次点の前原誠司氏の230ポイントを大きく上回る圧勝だった。
 ところが、蓮舫代表は驚愕の人事を発表した。自らの派閥のリーダーである野田佳彦前首相を、党運営の要である幹事長に指名したのだ。これには、民主党内で大きな反発が生まれ、幹事長以外の人事の了承が、週明けにずれ込んでしまったのだ。
 蓮舫代表が圧勝した理由は、新しい民進党の顔として、多くの党員が期待したからだ。ところが、民主党が政権から滑り落ちた2012年の総選挙を決断した、いわば戦犯中の戦犯が野田氏なのだから、党内の反発が出るのは当然のことなのだ。

 野田氏は、民進党のなかで、最も右翼側と言われてきた。実際、民進党と共産党の選挙協力に関しても、一貫して反対している。当然、普天間飛行場の辺野古への移設についても賛成の立場だ。
 それだけではない。民主党時代に党内で根強い反対のあったTPPについて、各国との交渉協議に入ることを首相として決めたのは、野田氏だった。さらに、消費税率の引き上げを決め、民主党分裂の原因を作ったのも野田氏。つまり、野田氏の政策は、現在の自民党の主張とほとんど変わるところがないのだ。
 自民党政策と唯一異なるのは、金融政策だ。野田氏は金融面でもタカ派で、金融引き締めを続けた。その結果、民主党政権末期には、1ドル=70円台の超円高を招き、株価は8600円台、景気動向指数は、東日本大震災直後と同程度まで下落した。そして、工場の海外流出に伴い、日本中に派遣切りの嵐が吹き荒れたのだ。

 つまり、蓮舫氏が野田氏を幹事長に指名したことは、民主党が日本経済を失速させたことに関して、何も反省していないことの証拠である。
 さらに、驚くべきことに、蓮舫代表は、代表代行に、財政金融引き締め派である安住淳元財務大臣を指名している。加えて政調会長には、大蔵官僚出身の大串博志だ。
 これで、蓮舫民進党の基本政策が完全に明確になった。野田政権時代の財政引き締め、金融引き締めの再現だ。それがもたらす結果は、経済の失速以外の何ものでもない。
 蓮舫代表は、基本政策として再分配の強化を表明している。しかし、いくら再分配と言っても、経済のパイを小さくさせては、元も子もないのだ。また、過去の歴史を見ても、格差は経済が収縮すると確実に拡大する。これは世界共通の現象だ。

 確かに蓮舫代表は、非常に頭がよいし、弁も立つだろう。それでも、民進党の党員は、蓮舫氏が野田グループの一員であるということを、きちんと認識しておくべきだったのではないだろうか。
 もちろん、国民が蓮舫民進党の被害を受けることは、実際にはほとんどないだろう。自民党以上に右派の民進党を支持する国民は出てこないからだ。
 この民進党の右派シフトを一番喜んでいるのは、政権が盤石になった安倍総理なのかもしれない。実際、蓮舫代表誕生を受けて、安倍内閣の支持率は上昇しているのだ。

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