世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第220回 完全自動レジの時代、来たる!

 現在の日本は少子高齢化に端を発する生産年齢人口比率の低下を受け、人手不足が深刻化している。
 日本は確かに2010年をピークに総人口が減少しているが、ペース自体は大したことはない。何しろ、'16年の総人口の減少率はわずか0.13%だ。
 人口減少国の代表であるジョージア(旧:グルジア)は、ここ最近の人口減少率が毎年1.3%。また、ラトビアは1.1%である。世界には日本を上回るペースで人口が減っている国が、何と18カ国もある。
 ジョージアやラトビアに比べると、日本の総人口の減少ペースは間違いなく「誤差」レベルだ。

 とはいえ、わが国の“生産年齢人口”の減少ペースは、これは確かに早い。何しろ「少子化」であるため、生産年齢人口は総人口の数倍のペースで減っていっている。
 結果、ピークの1992年には69.8%だった生産年齢人口比率(生産年齢人口が総人口に占める割合)は、直近では60.3%と、6割切れ寸前になっている。

 生産年齢人口比率が低下すれば、人手不足になる。人手不足であるならば、普通に「生産性向上」のための投資をすれば済む話だ。人手不足を生産性向上で埋めることこそが、資本主義の王道なのである。そして、生産性向上は設備投資、公共投資、人材投資、技術投資という四投資によってしか実現できない。
 生産性向上で人手不足を埋めると、実質賃金が上昇する。実質賃金の上昇は、マクロ的には生産性向上以外では達成できない。生産性向上により実質賃金が上昇し、豊かになった国民は消費や投資を増やす。結果的に需要が拡大し、またもや人手不足。人手不足を生産性向上で埋めると、実質賃金が上昇し、需要が拡大。
 この循環が繰り返され、GDPが継続的に拡大していくのが「経済成長の黄金循環」である。高度成長期の日本は、「超」と付けたくなるほどの人手不足を、生産性向上で解消しようとした結果、年平均で10%近い経済成長が継続し、世界第2位の経済大国に成長した。
 現在の「人手不足」は、わが国を経済成長の黄金循環に乗せる絶好の機会なのだ。少子高齢化による人手不足を「生産性向上のための投資」で埋めたとき、わが国は再び目覚ましい経済成長路線に戻れる。

 それにもかかわらず、安倍政権は「外国人技能実習制度の拡大」「国家戦略特区における外国人労働者導入」「高度人材受け入れ拡大」そして「外国人留学生の就労」という形で、外国移民の受け入れを拡大している。ちなみに国連やOECDの定義によると、外国移民とは、
 「12カ月以上、出生地以外に滞在する人」
 という定義になる。技能実習生だろうが留学生だろうが、すべて定義的には「外国移民」になる。安倍政権の「人手不足を外国人労働者で埋める」という資本主義に反した方針は、「移民受け入れ政策」以外の何物でもないのだ。

 今や、東京圏のコンビニエンスストアは「外国人労働者だらけ」である。日本はコンビニにおける外国人労働者の雇用について、技能実習生としてであっても禁止している。
 では、なぜ東京圏のコンビニは外国人店員だらけなのか――。理由は「留学生のアルバイト」の制度を悪用(あえて「悪用」と書く)されてしまっているためだ。

 少子化により、定員割れになる大学が増えてきた。同時にデフレ深刻化でコンビニの時給が据え置かれ、安い時給で働くアルバイトが減ってきた。
 正しい対処法は、完全自動レジ導入などの設備投資を実施して省力化を実現し「時給引き上げでアルバイトを呼び込む」だったはずが、現実には「留学生で大学の定員を埋め、彼らを外国人労働者としてコンビニが雇う」という道が選択されてしまったのである。

 2月14日に、パナソニックとローソンが電子タグ(ICタグ)を利用した完全自動レジの実験を公開した。電子タグから価格情報をレジが読み取り、自動計算するシステムになる。完全自動レジ導入により、コンビニ店員の労働時間の約4分の1を占めるレジ対応を省力化することが可能だ。
 そして、ついに4月18日、コンビニ5社が電子タグを利用した「完全自動レジ導入」を宣言した。素晴らしい。
 本来であれば、コンビニ業界は5年以上前に、完全自動レジの導入を始めるべきだった。生産性を高めることで時給アップを可能とし、日本の潜在労働力を呼び込むべきだった。

 就業を希望しているものの、求職活動を行っていないため非労働力人口とされている、いわゆる潜在的な労働人口は、わが国は'16年の数字で380万人に及ぶ。ある意味で、日本は人手不足ではない。厳密には、
 「生産性向上により実質賃金を高め、潜在労働力を活用することで人手不足を解消する」
 という正しい道が存在しているにもかかわらず、企業は生産性向上のための技術投資や設備投資に踏み切らず、賃金の引き上げも拒否した。結果、生産年齢人口比率低下の影響をまともに受け、ひたすら人手不足が深刻化していっているのが現在の日本だ。
 特に、若年層が相変わらず東京に流出する地方は、人手不足が顕著になっている。もちろん、地方においても潜在的労働人口の労働市場への流入を促進する必要があるが、同時に日本の地方こそが「生産性向上のための投資」をけん引するという事実を理解してほしい。

 世界における生産性向上を、日本の地方がけん引する時代が訪れたのだ。理由は簡単。日本の地方こそが世界の中でも突出して人手不足が深刻化している地域であるためだ。
 日本国(特に地方)に必要なのは、人手不足を解消する生産性向上のための投資、実質賃金の引き上げ、潜在労働力の活用、この三つ以外にはない。
 日本の経営者が、あるいは日本国民が、「人口減少で衰退する」といった幼稚な理論から脱却し、「人手不足を埋めるために、いかに生産性を上げるべきか」について真剣に考え始めたとき、わが国は再び経済成長の黄金循環に乗ることができる。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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