森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 消費増税凍結の可能性は高まった

 10月に行われた総選挙で、与野党の最大の対立は、経済の面では、消費税増税だった。与党は、幼児教育などの無償化を実施する条件付きで消費税率を'19年10月から予定通り引き上げるとしたのに対して、野党は景気回復を国民が実感できていないなどとして、消費増税を凍結ないし取り止めるよう訴えた。
 選挙で与党が大勝したのだから、消費税も予定通り引き上げられると考えるのが、素直な見方だろうが、私は真逆だと思っている。消費増税は、凍結される可能性が高くなっているのだ。

 仮に、増税凍結を主張する野党が政権を奪ったとしよう。
 彼らは、消費増税を本当に凍結できるか。答えは、NOだ。財務省は、国税庁という捜査権を持つ官庁を傘下に置く、最強の官庁だ。また、消費増税で得られる税収は、官僚全体の利権を増やす道具だから、増税凍結は霞が関を敵に回すことになるのだ。
 普通の政治家は、それに耐えられない。現に、民主党が政権を奪った'09年、民主党は「消費税増税の前に行革をすべき」とアピールして、消費増税に反対のスタンスを採っていた。ところが、菅政権になってスタンスが揺らぎ、野田政権のときには、消費増税を決断してしまった。財務省から何らかの圧力が働いたに違いない。
 実は、安倍総理は、政界で唯一といってよい財務省と戦える政治家だ。現に、過去2度も、消費税増税を延期している。おそらく、安倍総理には金銭スキャンダルや女性スキャンダルがないので、圧力に強いからだろう。

 衆院選挙の期間中、安倍総理は、消費増税に関して、「リーマンショック級の経済危機が訪れれば、凍結も考える」と述べていた。しかし、そんな事態は起きないと多くの人が思っているだろう。足元の株価が絶好調で、経済も順調に成長しているからだ。
 しかし、私は、経済危機が来ると考えている。バブル崩壊だ。現在、東京株式市場は絶好調で、10月には史上初となる16連騰も記録した。しかし、私は来年か再来年前半に株価が大きく下落すると見ている。引き金を引くのは、都心不動産のバブル崩壊だ。

 銀座5丁目の鳩居堂前の坪当たり路線価は、バブルのピークだった'92年には、1億2000万円だった。ところが今年は、1億3300万円に達している。すでにバブル期を上回る地価がついているのだ。そんな高値で土地を仕入れても、賃貸で取れる利回りは限られる。
 実際、いまの都心物件の利回りは、3%程度まで下落している。家主はそこから固定資産税や修繕費を支払わなければならない。空室のリスクを考えれば、実質赤字だ。それでも都心物件が売れたのは、値上がりによるキャピタルゲインが得られたからだ。しかし、すでに湾岸のマンションの価格は頭打ちの状態になっている。
 となると、投資家が物件を手放すことから、都心の不動産価格が下がり始める。一方、損失を抱えてしまった投資家は、株を処分して穴埋めをするから、株価も下がるのだ。

 私はこの事態が、再来年前半までに起きるとみている。安倍総理は、その危機を受けて、消費税凍結を打ち出すのだ。

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