森友問題で命を絶った赤木俊夫さんの命日。彼の告発を振り返ることの重要性とは

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、まだ終わっていない「森友問題」を語る。

(この記事は、3月22日発売の『週刊プレイボーイ14号』に掲載されたものです)

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3月7日は森友学園をめぐる財務省の公文書改竄(かいざん)問題で自死した元近畿財務局職員の赤木俊夫さんの3回目の命日だった。

私は、この命日をめぐり森友事件の真相究明を求める報道が多く行なわれると期待したのだが、世間の注目は「3・11から10年」というテーマに集中し、7日の命日に妻の雅子さんが赤木さんの故郷の岡山県倉敷市に墓参りに訪れたことが小さく取り上げられただけだった。

しかし、赤木さんの告発を風化させてはならない。赤木さんの誕生日は3月28日だ。その日を前に赤木さんの死が私たちに突きつけている問題をあらためて考えてみたい。

財務省は赤木さんが公文書を改竄した経緯を克明に記録した「赤木ファイル」の提出を今もかたくなに拒んでいる。しかも、国会の要求には「遺族の起こした国家賠償請求訴訟(国や自治体に対して起こされる訴訟)に不当な影響を与える」と拒みながら、裁判所には「財務省の調査報告と齟齬(そご)はなく、訴訟の結論に影響はない」と、まるっきり逆の理由で提出を拒んでいるのだから支離滅裂だ。

そこから浮かび上がるのは官僚の倫理の劣化。政治家同様、官僚の行動は「李下(りか)に冠を正さず」が基本だ。全体の奉仕者として疑惑を持たれるような行動は厳に慎まなければならない。

ところが、安倍前首相が森友疑惑に関して「私や妻が関与していれば、総理大臣も国会議員も辞める」(2017年2月17日、衆院予算委)と答弁した日を境に潮目が変わる。「政治に忖度(そんたく)してウソをついても逮捕されなければよい」となった。その象徴が公文書改竄を主導した佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官だろう。

一方、「僕の契約者は国民」が口癖だった赤木さんはその対極のような存在だった。だからこそ、上部の命令で改竄に関与させられたことを悔い、その不正を告発しようと自死を選ばざるをえなかった。

だが、これまでの財務省の対応を振り返ると、赤木さんの告発を真摯(しんし)に受け止めているようにはとても見えない。その意味することは政官のさらなる腐敗である。

今、大きな問題となっている総務省の接待疑惑にもそうした腐敗の構図が見える。同省は東北新社の外資規制違反に目をつぶり、あえて衛星放送の認定を取り消さなかった。

国会では、「外資比率が2割を超えて違反状態になったと総務省に報告した」とする東北新社に対し、総務省側は「覚えはない」とこれを否定した。だが、どう見ても報告があった可能性のほうが高く、その場合は東北新社の主張を裏づけるような応接録やメモが存在するはずだ。

一方、東北新社には菅首相の長男が勤務していて、首相との関係が問題となっているが、首相は長男と自分は「別人格」だと国会で答弁し、疑惑を真っ向から否定した。森友事件と似た展開だ。

財務省は安倍前首相に忖度して、国有地を不当な安値で売却し、さらに決裁文書にあった昭恵夫人と森友学園の関係を示す記載などを削除するという「犯罪行為」にまで手を染めた。

総務省でも、菅首相への忖度を迫られ、隠蔽(いんぺい)・改竄に追い込まれてもがき苦しむ第二の赤木さんが出てもおかしくない。

そうならないように、多くの人々にもう一度、赤木さんの告発に耳を傾けてほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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