石破 茂が語りかけた47都道府県メッセージ「『人を感動させる魅力』を、地方自らがもっと伸ばし、国が手助けする。それこそが地方創生です」

石破 茂が語りかけた47都道府県メッセージ「『人を感動させる魅力』を、地方自らがもっと伸ばし、国が手助けする。それこそが地方創生です」

『47都道府県のみなさまへ』の動画制作について語る石破氏

8月末、石破 茂(いしば・しげる)氏は自民党総裁選に向け、日本の全都道府県それぞれに語りかけたメッセージ動画をアップした。各10分前後の動画が47本。サイト名は「47都道府県のみなさまへ」。

その内容は、ありきたりの名産品や観光地の解説に終わらず、各県で斬新な取り組みをしている地元企業や市町村を、持ち前の尋常でない記憶力で次々と紹介し、各県の潜在能力を台本ナシ&ノーカットで畳みかけたものだった。

この石破氏の47都道府県メッセージを『週刊プレイボーイ』44号(10月15日発売)では、すべて文字に起こし一挙掲載している。彼の「地方創生」への熱い思いを感じ取ることができるこのメッセージ、読めば日本は面白い所だらけだと再認識できるはずだ。

そして石破氏本人に、徹底した事前準備、秘密裏に行なわれた撮影など動画制作の裏話を語っていただいた。

* * *

■ひとつの県につき準備は5時間

――動画制作のきっかけはなんですか?

石破 総裁選に向けて、やれることはすべてやろうと。あの企画を言いだしたのは平将明(衆議院)議員で、香川と徳島を1回目に撮りました。

――準備を含めて、動画制作にはどれくらい時間がかかりましたか?

石破 各地に行くたびに、それぞれの地域の情報をまとめたファイルを作りました。例えば北海道の動画で触れた幌加内(ほろかない)は、小さなまちだけれども、ファイルはこれくらい(5cmほどの幅を両手でつくる)ある。でもそれは市町村ごとなので、まとめて都道府県単位の資料を作るのが2時間。それを撮る前の晩に読み込むのが3時間。ですから、ひとつの県につき準備は5時間かかりました。

撮影時間は短い県だと10分ぐらい。長い県は40分から50分ほどかかりました。撮り直しも含め、すべて合わせて計50時間を、土日の4日間で撮影しました。ただ、全体の半分、24県目を超えるまではつらかったですね。いつ終わるんだろうと(笑)。

――スタッフにはどういった方が?

石破 平議員がディレクターみたいな役割で。撮ってくれたスタッフは、『イシバチャンネル』(石破氏の公式サイト内にアップされた動画)を担当してる人たちと、あとは「POTETO(ポテト)」という学生ベンチャー。正真正銘の手作りです。

――ただ、その地域の観光地や名産品などについて語るときは、映像を添えたりしたら動画のクオリティはさらに上がったと思うのですが、そういったことは検討しなかったんですか?

石破 はい。お金も時間もないなか、そこは検討する余地もありませんでした。仮にもっとお金や時間をかけても、あれ以上のものはできなかったと思います。

あと、当初"極秘プロジェクト"みたいな扱いにしていたこともありまして、そんなに大々的に取りかかれなかったという事情もありました。

――よくテレビの撮影現場だと、出演者が見えるところに台本や歌詞が流れていたりしますが、そういうものもなしで撮影したのですか?

石破 もちろん。台本もありません。ただ、固有名詞は間違えたら大変なので、それだけはフリップをスタッフに持ってもらって、それを見ながら話していました。

――動画の中で紹介した観光地や名産品は、本当に膨大な数でした。

石破 大変でしたね。でも、「石破は、私たちの地元を知った上で政策を語っているんだな」と思ってほしかったから、細かい地名を出さないわけにはいかない。

――都道府県ごとの話題は、誰もが知ってるメジャーなものばかりになるのをあえて避けているように見受けられますが?

石破 それはできるだけ避けました。「こんなところも知っているんだ」と思ってもらいたかった。例えば愛知県なら、自動車の話ばかりしてもしょうがないから、ものづくりの愛知が林業をどう変えるか、という話をした。実は農業、漁業の県でもあるんだとか。一般的なイメージではない愛知県の姿を話しました。

――どこに重きを置くかは、すべて石破さんが考えられたんですか。

石破 そうです。すべて自分が強い印象を受けたところを話しています。北海道は帯広の十勝バス、福井ならえちぜん鉄道といった、全国を回ってすごく感激した話を必ずひとつは入れています。地方創生ってこういうことだと訴えたかったから。

―――般の観光の視点とは異なるんですよね。「47都道府県メッセージ」が面白いのは、「今動いていること」に触れているからだと思います。

石破 地方が持つ「人を感動させる魅力」を、地方自らがもっと伸ばし、国が手助けする。それこそが地方創生です。

グローバル経済では、生産性はギリギリまで追求されている。でも、ローカル経済には伸びしろがいっぱいある。だから、ローカル経済を伸ばすのが日本のとるべき道だと私は本気で思っています。人口が減っていくこの国では、ひとりひとり付加価値を生み出していかないと経済は維持できない。京都のクリーニング屋さんとか、長崎のリンガーハットとか、付加価値を伸ばすヒントは地方にいっぱいあるわけです。

だけど自分の県の素晴らしさに気がつかず、「どうせこんな所に人なんか来るはずがないや」って思ってる人は多いですね。動画を見て「うちの県ってこんなにすてきなんだ」という反応がずいぶんありました。

■「都会で勉強したらふるさとに帰ろう」

――ひとりで47都道府県のすべてについて、あそこまで詳細に語れるというのは、石破さんにしかできない仕事じゃないかなと。

石破 私は地方創生大臣(15年10月〜16年8月)をやっていたから、全国を見られた。あれは私にとって、ひとつのターニングポイントだったかもしれません。

私の地元の話をすると、生まれは東京ですけど、育ったのは鳥取。自分が小、中学校を鳥取で過ごしていたときは、本当にわくわくするほど楽しかった。15歳から東京に出たんだけど、鳥取のほうがよっぽどいいと思っていました。

でも世間を見ると、地元にいることが楽しい、うれしい、という気持ちは失われて、勉強して東京のいい大学に入っていい会社に入る、という価値観が普通になっています。

――自分が子供の頃楽しかったことを、これからの子供たちにも味わわせてあげたいと?

石破 それもあるし、「この店は自分の代で終わりだ」という諦め感を、なんとか地方から払拭(ふっしょく)したい。もう一度、希望を持ってもらいたい。

例えば、通う大学は東京でも大阪でもいい。ただ、長野県の動画でも述べたように、都会で勉強したらふるさとに帰ろうっていう、流れにしたい。私は強くそう思っています。

●石破 茂(いしば・しげる) 
1957年生まれ、鳥取県出身。当選11回。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣、自民党幹事長(2回)を歴任。著書に『日本人のための「集団的自衛権」入門』『日本列島創生論』(いずれも新潮新書)など。15年9月に自身の派閥である「水月会」(石破派)を発足。政界屈指の国防識者。鉄道マニアでもある

撮影/五十嵐和博

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