「民主党のトラウマ」をどうする? 立憲民主党代表・枝野幸男「私たちは"非自民で集まる"という過ちを二度と犯さない」

「民主党のトラウマ」をどうする? 立憲民主党代表・枝野幸男「私たちは"非自民で集まる"という過ちを二度と犯さない」

「もはや『安倍政権と戦う』のは第一目的ではありません。立憲民主党の旗をクリアに、高く掲げて、いかに支持を集めるのかというのが問われているのだと思います」と語る枝野幸男代表

国民がいまだ野党に不信感を抱いていたり無関心なのは、民主党政権時代の失敗が尾を引いているからだ。そしてそれが"安倍一強"をつくった一因でもある。

かつて民主党に所属し、今は新しい野党の代表を務めるふたりの政治家は、この問題にどう向き合うのか? 国民民主党の玉木雄一郎代表に続き、今回は立憲民主党代表の枝野幸男氏に聞く。

来夏の参院選に向けて、玉木代表は「野党共同の選対本部をつくろう」と立憲民主党にラブコールを送っているが、枝野代表はけんもほろろ。

自公政権が衆参共に3分の2の議席を握るなかで、なぜ野党共闘に難色を示しているのか? 野党がバラバラのままでは、安倍一強を打破することはできないのではないか? 枝野代表に聞いた。

■共闘ではなく連携を

──枝野代表は野党共闘に消極的に見えます。

枝野 「野党共闘」の意味をしっかり考える必要があります。ほかの野党とは安倍政権よりはましな政権が必要という点では一致しています。ただ、立憲民主党は日米安保重視だし、自衛隊合憲論だし、安保法制だって「違憲な部分はダメ」というスタンスです。

その意味で例えば共産党とは大きく違う。吟味もせず単に一緒に戦ってしまったら両方のよいところが消えてしまうと思います。だから、野党共同の選対本部も設置する気はありません。ただ、野党同士の"連携"はきっちりとやりますよ。

──共闘と連携はどう違うんですか?

枝野 連携であれば野党同士の政策のすり合わせはいりません。選挙であれば、参院選1人区(選挙において定数が1名の選挙区)の調整はしますが、それは「野党の共同選対」が決めたものであってはならないと考えています。

──なぜ?

枝野 2年前の参院選では、1人区において野党候補の一本化を実現しましたが、実は政党同士での調整は一切していません。各地域ごとに、市民連合に象徴されるような有権者の動きのなかで、自民党の対抗馬をひとりに絞れというプレッシャーを受けて、各政党がそれぞれに応じた結果として、そうなった。

中央(野党の共同選対)が決めた政党間の駆け引きの産物ではなく、市民の要望によって候補者が一本化する。私は、1人区において野党候補が勝つためには、それしかありえないと思っています。

──ただ、野党がバラバラに戦うことで、与党が漁夫の利を得るという意見もあります。

枝野 野党の5党1会派それぞれの持ち味を生かす形で切磋琢磨(せっさたくま)して、複数の選択肢を示すことが、野党各党が最大限の票を得ることにつながる。野党が非自民という共通項で「共闘」しても、それは消極的で後ろ向きな選択肢を示しているだけです。

民主党は非自民の勢力を結集して政権を獲(と)り、そして瓦解(がかい)した。この失敗を二度と繰り返したくない。昨年10月2日に立憲民主党を立ち上げ、私の旗を明確に有権者に示しました。この意見に賛成する人はどんどん入ってきてくださいと。その旗を「共闘」による政策のすり合わせで、ブレさせるつもりはありません。

──国民民主党の呼びかけに冷淡に見えるのは、「共闘」することで民主党時代のトラウマを有権者に呼び起こすことを恐れているのでは?

枝野 その見方はあまりに皮相的です。そもそも私の認識では、立憲民主党は民進党(民主党)から分かれた党ではなく、ゼロから建てた「新しい家」。もちろん、民主、民進の両党は私に貴重な政治体験をさせてくれた場ではありますが、昨年10月2日で"過去の歴史"になりました。

──元仲間のよしみは関係ないと。

枝野 はい。(国民民主党の)前原誠司さんとは今でもカラオケに行こうと思えば一緒に行けますが、国民民主党だけと共闘するという発想そのものが今の私にはありません。国民民主党から何か申し入れがあっても、「じゃあそれは2党ではなく、野党5党1会派でやりましょう」と全部返しています。

9月4日に玉木さんが党代表に当選した直後、ご本人から直接電話をもらったんですが、それにも「おめでとう。お互いにがんばってやっていきましょう」としか返していませんね。

■"永田町の論理"からいかに離れるか

──とはいえ、その姿勢は野党の支持拡大にはあまりつながっていないように見えます。「NHK世論調査」によると今年8月時点での立憲民主党の政党支持率は5.6%。同年3月の10・2%からほぼ半減しました。野党第1党として、さすがにこのままではマズイのでは?

枝野 それは特別なことではありません。野党の支持率はメディアの報道量に比例するので、自民党総裁選のただ中にあった8月、9月で低い数値になるのはしょうがない。

それよりも気にしているのは"街頭の空気"です。民主党が下野した12年末から、民進党に名前を変えた約5年間、私が街頭で演説しても話すら聞いてもらえないという状況でした。でも、今は「立憲民主党は何を考え、何をしようとしているんだ」と非常に関心を持って聞いてくれる。この状況は昨年の結党以来ずっと変わっていません。

──そういえば、立憲民主党は今月3日に結党からちょうど1年たちますね。

枝野 今や30を超える都道府県に地方組織があり、地方議員も400名を超えました。ほぼゼロに等しいところから結党したことを考えると、夢みたいな状況です。

──ただ、立憲民主党はいわゆる中道左派の政党で、政権を狙うためにはもう少し、支持のウイングを右に伸ばす必要があるとよく言われますが。

枝野 それはまったくの間違いです。国民にとっては、よい政治をしてもらうことがすべて。どこの党に何人の議員がいるとか、どことどこの党がくっつけば政権を狙えるとか、そんなことが国民の主要な関心事とは思えません。そんな"永田町の論理"からいかに距離を置くか?が私たちのテーマだと思っています。

先月中旬に訪米して肌で感じたんですが、とにかくワシントンはアンチ・トランプ一色でした。でも、トランプ氏や、思想的・政策的にその対極にあるサンダース氏を2年前の大統領選で躍進させたのは、そんなワシントンを毛嫌いする米国民だったんです。こうした潮流はアメリカだけでなく、日本でも起こっていると思うんですね。

──日本の有権者もアンチ永田町になっているというわけですか?

枝野 そう。例えば先の自民党総裁選で石破茂議員が渋谷で演説をしたとき、街頭で最も熱狂的に石破議員を応援していたのは、左派と呼ばれている人たちです。彼らは石破議員がタカ派でゴリゴリの改憲論者とわかっている。だけど、石破議員は永田町のチマチマした論理や損得勘定で動いていない分、安倍さんよりはましな選択として、あれだけの声援を送った。

同じようなことは昨年10月の総選挙でも感じました。立憲民主党も損得抜き、負け覚悟で戦ったから、あれだけの支持をもらうことができたんです。だから、わが党の立ち位置は「草の根民主主義」。今後も永田町の常識を逆張りするくらいのことをやっていくつもりです。

■首相になれなければ政治家を辞める

──それでは、あと何年で政権を奪取できますか?

枝野 結党した昨年秋は15年、20年はかかるかもしれないと覚悟していましたね。ただ、立ち上げ早々から大きな支持をもらって、この1年間でその期間をかなり短縮できたんじゃないかな、と思います。さすがに具体的な年数までは口にできませんが。

──今後の戦い方は?

枝野 政策だけでは自民に勝てません。自民の支持層はその理念、政策というよりは地域での"人間関係"から支持を広げている。そこから自民票を奪って小選挙区で勝ち抜くには、こちらも地域で自民に負けないような人間関係を築かないといけないんです。その作業に党として地道に取り組んでいくつもりです。

それと、あとは候補擁立ですね。次の衆院選に備えて最低でも定数の半数くらいの候補者を立てます。そうしないと、政権を目指すとはとても口にできませんから。ただ、誰でもいいわけではない。少なくとも選挙に勝ったときに、内輪から足を引っ張ったりしない候補を選ばなきゃ(笑)。

──では、「共闘」ではない、野党連携をベースとした政権構想を示すのはいつですか?

枝野 政権構想は大勢で集まって議論してもつくれるものではありません。党首の責任として、私ひとりでつくります。それを示すのは次に衆院が解散された翌々日くらいかな。

ただでさえ、野党は与党より弱い立場にあるわけでしょ。あまり早くに公表して手の内さらすバカはいませんから。だから、そのときを楽しみにしていてください。

──一部から「立憲民主党は政権を獲る気がないのか?」との批判がありますが、枝野代表の話を聞いていると、全然そんなことないですね。

枝野 もちろん。ハッキリ言いますと、私は野党の議員を長年やることに意味を感じていません。やっぱり政権を握って、この国を動かすために政治家やっているんで。自分が総理大臣になれないことが確定した時点で(政治家を)辞めますよ。

●枝野幸男(えだの・ゆきお)
1964年生まれ、栃木県出身。93年、日本新党の公募候補として初当選。その後、新党さきがけなどを経て98年に民主党結党に参加。民主党政権時代(2009年〜12年)は内閣官房長官、経済産業大臣などを歴任。17年9月、民進党代表選挙に立候補し、前原誠司議員に敗北。同年10月、民進党分裂に伴い立憲民主党を結党。代表に就任した

撮影/五十嵐和博

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