金正恩の「激ヤセ重病説」と後継者問題の読み解き方

6月17日の金 正恩。頬まわりもアゴのラインも明らかにすっきりしており、急激に痩せたことは間違いない

北朝鮮・金正恩(キム・ジョンウン)総書記の健康不安説がにわかに再燃している。きっかけは6月25日の朝鮮中央テレビの報道。その直前に開かれた音楽会を観覧する正恩氏の姿を見て、「おやつれになって胸が痛む」と心配する住民のインタビューを放映したのだ。

実はこのところ、北朝鮮ウォッチャーの間では正恩氏の「体重」をめぐって、ふたつの見解が飛び交っていた。

「原因は北朝鮮メディアが伝えた6月4日の正恩氏の映像です。労働党政治局会議に出席するため、約1ヵ月ぶりに公の場に姿を見せたのですが、アゴのラインがすっきりするなど、明らかに痩せていた。これがダイエットの成果なのか、それとも体調不良による"激ヤセ"なのか、意見が真っぷたつに割れていたんです」(韓国紙東京特派員)

そんな折、「やつれた姿」に言及したインタビューが流れたことで、健康不安説が有力視されるようになったわけだ。

この説にさらに拍車をかけるのが、今年1月初旬に行なわれた朝鮮労働党の規約改正で、「金正恩」の名前が「党中央」という呼称へと差し替わったことだ。北朝鮮事情に詳しいアジアプレス大阪事務所代表の石丸次郎氏が解説する。

「差し替えの理由はふた通りの分析が可能でしょう。ひとつは、正恩氏の自信の表れという見方。その場合、統治体制が盤石になったとの自負から、自分の名前を前面に出す必要はないと判断した正恩氏が、最高指導者を意味する『党中央』へと呼称の差し替えを指示しただけということになります。

そしてもうひとつ考えられるのが、自分以外にも最高指導者になれる余地を残すために規約を変更したという見方です。個人名でなく『党中央』なら、ほかの人間でも革命の首領として"唯一領導"が可能になりますから」

ただし、最高指導者になれるのは「白頭(ペクト)の血統」と呼ばれる金一族だけというのが北朝鮮の大原則。そのため石丸氏によれば、「党中央」の代役ができる可能性があるのは正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏だという。

「音楽会での正恩氏の様子は生気に乏しく、あの痩せ方はダイエットというより体調不良のせいと考えるのが妥当でしょう。呼称の差し替えは、正恩氏の執務に支障が出たときに、兄に代わって与正氏が朝鮮労働党を指導できるようにするための危機管理策なのかもしれません」(石丸氏)

ちなみに、同じく1月の党規約改正では、「第1書記」というポストが新設された。これは単なるナンバー2ではなく、総書記の委任を受けて党会議を主宰できるなど「金正恩同士の代理人」と定められている重要ポストなのだが、この地位に誰が就いたのか、あるいは今のところ空席状態なのか、北朝鮮は一切明らかにしていない。

「これは明らかに正恩氏の後継者ポストでしょう。『金正恩』から『党中央』への呼称差し替えと第1書記ポストの新設を、後継準備のための"危機管理セット"と考えれば、第1書記の人選が公表されないことも合点がいく。

もし"激ヤセ"しているとしても、正恩氏はまだ37歳です。すぐに執務不能になったり、あるいは死去するようなことは考えにくい。実際、6月29日にも政治局拡大会議に顔を見せ、コロナ対策を討議しています。第1書記を今すぐ選出する必要はないのでしょう」(前出・韓国紙特派員)

その人選が公表されたときこそが、本当の後継Xデー?

写真/共同通信社

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