議席を伸ばした立憲が都議会選挙で"負けた"と考えるワケ

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、7月4日に投票が行われた東京都議会議員選挙を分析する。

(この記事は、7月12日発売の『週刊プレイボーイ30号』に掲載されたものです)

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東京都議会議員選挙が終わった。結果は自民党が第1党に返り咲いたものの、議席は33と旧民主党に政権交代を許した2009年都議選の大敗時(38議席)にも届かない低調ぶりだった。特に7つある1人区での当選はふたりのみで、野党に競り負けた。

そのため少なくないメディアが、議席増にもかかわらず、「自民大敗」と分析している。都議選は衆議院選挙の前哨戦という位置づけを考えれば、自民の焦りはかなりのものだろう。

それでは野党はどうだろうか? 注目されるのは野党共闘区だ。今回の都議選では立憲と共産が候補者を一本化した21選挙区のうち、12選挙区で当選者が出た。それにより、共産党が18から19へと微増、立憲民主党は8から15へと倍増した。この数字だけを見て野党の復活、特に立憲が都議選に続いて、衆院選でも大幅に議席を伸ばすと予測する向きもある。

しかし、私はそうした見方には懐疑的だ。「野党共闘成功」「議席倍増」などの威勢のよいキーワードに惑わされがちだが、冷静に立憲の戦いぶりを振り返ると、あまり伸びしろがないということに気づくはずだ。

まずは議席数だが、倍増といっても選挙前が8と極小だったことは見逃せない。しかも、国政の野党第1党でありながら首都・東京で共産党の議席数を上回ることもできず、議会第5勢力というありさまだ。

渋谷区や世田谷区など立憲での当選区を見ると、候補者本人とそこを地盤とする有力国会議員がしっかりタッグを組んで戦ったところがほとんどだ。

反対に多摩地区や23区東部など、候補者に力がなく、政党名や枝野幸男代表の顔を頼りに戦った選挙区では落選したケースが多い。つまり、立憲候補は陣営の自助努力で当選できても、党や代表の名前では勝てないのだ。

このところの菅義偉首相の自民党は河合克行元法相夫妻や菅原一秀元経産相の有罪判決、五輪防疫の崩壊、ワクチン供給遅れなど、失点続きだった。これだけ失策が続けば、無党派層を中心に野党第1党への期待が高まるのは当然だろう。

しかし、都議選で票を集めて善戦したのは壊滅が予測された都民ファーストで、立憲はその足元にも及ばなかった。実際、都議選直後に立憲の国会議員何人かと話したが、「自民だけでなく、立憲も敗北ですよ」という嘆息ばかりが聞こえてきた。

このままでは次期衆院選で立憲は伸び悩むだろう。

自民党がコロナ対策や五輪強行開催などで失点を重ねても、その状況は変わらない。例えば麻生太郎副総理は過労で倒れた小池百合子都知事を「自業自得」、安倍晋三前首相は「反日的な人が五輪開催に強く反対している」などと発言し、物議を醸した。今後も、このふたりが失言を連発すれば自民批判の声はより大きくなる。だが、行く先を失ったリベラル票、自民批判票の一部は共産へ流れる。そして残りの大半は棄権票となり、投票率が下がる可能性が高い。

立憲は枝野代表が若手の女性議員と交代するなど思い切った策を取らなければ、政権交代など望めないだろう。

自民とともに「立憲も敗北」。今回の都議選を冷徹に評価すれば、それが野党第1党の現状だ。この不都合な真実に向き合い、危機感を持って衆議院選挙に向けた戦略を再構築してほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。古賀茂明の最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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