派閥&経産省&財界の「アンチ河野」策動は総裁選にどう影響する?

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、自民党総裁で策動する「アンチ河野」について分析する。

(この記事は、9月27日発売の『週刊プレイボーイ41号』に掲載されたものです)

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自民党総裁は誰が勝つか。日本の将来を考えれば、今の自民党政治を根本から変える候補が望ましい。その観点で、河野太郎氏しかいないと私は見ている。

下馬評でも「河野太郎が優位」とする向きは強かった。国民の人気を背景に、党員・党友票でほかの3候補を圧倒する勢いを見せれば、選挙に不安がある若手議員は、次の衆院選での自民党の顔として雪崩を打って河野氏に投票する、という見方だ。

しかし、今やこの予測は不透明になっている。河野氏と距離を置く3A(安倍晋三前首相、麻生太郎副総理、甘利明税調会長)の実力者トリオの意向を受け、若手議員に河野氏に投票しないよう主要派閥の締めつけが強まっていることに加えて、経済産業省と財界が河野陣営から党員・党友票を引きはがそうと躍起になっているからだ。

派閥に縛られる議員とは違って、党員・党友は一個人である。しかし、実際には、その4割程度は個人というよりも企業に属する「職域党員・党友」という性格が強い。そのため、総裁選での投票も職域団体傘下の企業の意向に左右されがちだ。

そこで、経産省と財界、派閥の幹部がタッグを組んで企業団体や地方の企業などを通じて、アンチ河野で「職域党員・党友」票を取りまとめているのだ。

また、トヨタ社長の豊田章男氏も「一部の政治家が」と名指しは避けたが、再生可能エネルギーとEV化の推進を牽制(けんせい)する発言で注目を浴びた。それは事実上、アンチ河野の立場であることを表明したことになる。

自民党総裁選は1回目の投票で過半数を獲得する候補がいない場合、上位2人で決選投票を行なうというルールになっている。経産省と財界の動きが功を奏して地方票が伸び悩めば、河野氏が1回目の投票で過半数を取るのは難しい。決選投票なら、3Aが支援する岸田、高市陣営が連合して票をまとめ、河野氏を破る可能性が高くなる。

決選投票では382票の議員票と都道府県の47票で勝敗が決まる。河野支持の地方票が伸び悩めば、「河野総裁」でも衆院選で期待したほどの風が起きないかもと河野氏に期待した若手議員に迷いが生じる。彼らには、河野支持に回れば派閥の選挙資金が減り、経済界からの選挙資金や選挙運動の支援も減るという二重のデメリットがある。それを考えれば河野氏への投票をやめる議員が増えるのは必至だ。

そこで、河野陣営は派閥領袖(りょうしゅう)に忖度(そんたく)して先鋭的な主張を抑制する作戦を取っているが、それも「変節太郎」などと批判されて地方票が伸び悩むリスクを抱えている。

河野陣営は若手に支えられ勢いはあるが、総裁選を勝ち抜くためのしたたかさがない......派閥議員のひとりは、河野陣営を「クラブ活動のようなもので浅知恵だ」と揶揄(やゆ)した。

経産省と財界がアンチ河野である理由は明白だ。河野氏は脱原発主義者で、菅義偉内閣でも50年カーボンニュートラルと再エネ最優先を主導した。河野政権になれば、原発や既存のエネルギーの利権が失われ、EV化に遅れた自動車メーカーなども苦境に陥る。それを止めたいのだ。

既得権死守を狙う古い自民党、世界の流れに遅れた古い財界と古い官界(経産省)による利権トライアングルに河野氏が打ち勝つには、党員票での圧倒的勝利を導く「太郎らしさ」を前面に出すことが必要だ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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