日本の半導体のようになるな! パナソニックの新型電池はEV市場の覇権を狙える

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、パナソニックがチャンスを前に、車載用電池の世界で完全な負け組に転落してしまう危険性があると指摘する。

(この記事は、11月22日発売の『週刊プレイボーイ49号』に掲載されたものです)

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パナソニックが飛躍と衰退の岐路に立っている、と言ってもピンとこないかもしれない。

同社は10月下旬、EV(電気自動車)向け新型リチウムイオン電池の試作品を公開した。EVで世界一の米テスラ向けに開発したもので、従来の電池比で容量5倍、出力6倍を達成した。これによりEV生産コストの大幅引き下げが期待できる。

温暖化対策のための環境規制強化で、排ガスを出さないEVへのシフトが世界中で加速している。新型電池で先行すれば、世界のEVメーカーから引っ張りだこになり、パナソニックの飛躍につながるのは確実だ。

ところが、このチャンスを前にパナソニックの動きは鈍い。中国のCATL、韓国のLG、サムスンなどのライバル勢は、EV生産が加速する欧米、中国での巨大な新工場建設など次々と大胆な投資プランをぶち上げている。なのに、パナソニックからは具体的な投資計画がいまだ伝わってこない。

実は、同社は各事業部門を来年4月から8つの会社に分社化する予定だ。新型電池はそのうちのエナジー社が担当する。しかし、持株会社下での分社化は、"社内分社化"の延長線上でしかない。そこでは子会社の支配権は持ち株会社にあり、子会社は独立・迅速な意思決定ができない。「電池に巨額投資を!」という現場の声を素早く反映するのは困難だ。

心配なのは、このままではせっかくの飛躍のチャンスを失うどころか、車載用電池の世界で完全な負け組に転落してしまう危険性があることだ。

かつては世界市場の半分を占めて栄華を誇った日本の半導体ビジネスも、「社内の一部門にすぎない半導体生産だけを優遇できない」と総合電機メーカーが重点投資をためらううちに、巨額投資を惜しまない外国勢に完敗した。パナソニックの電池事業も同じ状況にある。

そんなパナソニックにとって参考になりそうなのが、事業3社の"完全分割"を発表した東芝の動きだ。インフラ部門やデバイス部門など、収益構造や投資手法の異なる事業を切り出して、各社は完全に独立した経営が可能になる。

パナソニックも東芝を見習って、エナジー社を完全分割するべきだ。車載用電池事業の飛躍のためには、外部資金の調達が必須だが、そのためにも同事業の独立化が必要になる。

海外のEV生産拠点に進出し、EV用モーターを世界に売りさばく日本電産も格好のお手本になる。日本の自動車メーカーはトヨタを筆頭にEV生産に出遅れている。今後の巻き返しも見込み薄だ。国内でEV用モーターを造っても買うところがない。ならばと、同社はEVが急拡大する欧州や中国などに工場を造って販売する作戦に出た。欧米で大きなシェアを取り、急成長産業のリーダーとなるのが目標だ。

EV用バッテリーもモーター同様、国内需要は非常に小さい。ならば、パナソニックも日本電産のように海外でバッテリー工場を新設し、海外のEVメーカーに電池を供給すればよい。

かつては世界の電池市場で断トツだったパナソニックも現在は3位。だが、新製品で巻き返すチャンスはまだある。東芝と日本電産の動きをヒントに積極経営に転じれば、日本復活の先導役になるのも夢ではない。

今が正念場だ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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