SFでなく現実に、いま続々と採用されている必殺ウエポンの効果とは? 世界の軍隊「レーザー兵器」超入門

アメリカ海軍とロッキード マーティン社が開発した艦載型レーザー兵器「ヘリオス」シリーズ。実は在日アメリカ海軍にも配備され、最強レーザー兵器と言われるが、その威力は!?

アニメやゲームでは超定番のレーザー兵器。そんな必殺ウエポンがリアル軍隊ではどのように運用され、その威力は? すでに軍隊で使用されているレーザー兵器にまつわる最新事情を超速解説ですっ!

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■SFとは大違い

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先月、アメリカ空軍がレーザー兵器を搭載した航空機を運用することが発表された。一方、アメリカ海軍ではすでにイージス艦に搭載され、今年9月より日本の横須賀基地に配備中。また、イスラエルでは砲撃対策として地上設置型のレーダー兵器も導入されている。

このSFエンタメの定番超兵器は、現実ではどんな威力や運用法となっているのか? 元陸上自衛隊幹部で軍事ジャーナリストの照井資規さんに聞いていきましょう!

――SFエンタメでは大迫力の演出でクリティカルヒット連発のレーザー兵器。これ、現実ではどんな感じに表現されるんですか?

照井 エンタメ作品では演出上の理由で光線がピンクやグリーンに着色されますが、現在軍隊で採用されるレーザーは光と同じで目視できません。

――でも、アメリカ軍が公開した動画だとレーザーが目視できますが、これは?

照井 アメリカ海軍が公開した映像はレーザーの光線を可視化できるレンズで撮影した映像です。そもそもレーザー兵器は、目視どころか音も光も発することなく攻撃できるのがメリット。ただ、そのメリットをエンタメで再現すると、ロボットがパントマイムするだけの演出になるのでやむをえず着色されています。

――では実在するレーザー兵器はどのようなシステムで発射されているんですか?

照井 ものすごく簡単に説明すると、電力で発生させた光線を束ねて標的に照射するのがレーザー兵器になります。誰もが小学校で体験した【虫眼鏡で紙を焼く】理科の実験と同じです。医療用のレーザーメスや工業用のレーザー溶接なども原理は一緒です。

――そんなレーザーを兵器として利用することになったきっかけは?

照井 軍事的な研究としては1960年代から行なわれていました。しかし、当時はまだレーザーの光線を敵兵へ照射して視界を奪う程度でした。

研究が本格化したのはアメリカが83年から始めたスターウォーズ計画(戦略防衛構想)です。これは敵国から発射された大陸間弾道ミサイルを宇宙空間の人工衛星から撃墜する計画で、その人工衛星に搭載するミサイル破壊用の兵器としてレーザーが研究されました。

――きっかけは完全にSF設定じゃん! でもなぜ、宇宙での利用が研究のきっかけになったのですか?

照井 レーザーは電力さえあれば、弾薬の交換や発射ラグもありません。可動部分が少なく故障率も低い。そして天候に左右されることなく、命中精度が圧倒的に優れている。核ミサイルを確実に破壊できる兵器として研究されましたが、スターウォーズ計画自体が冷戦の終了により、消滅してしまいました。

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アメリカ陸軍とボーイング社が開発した小型レーザー兵器「CLWS」。軽自動車サイズの車両への搭載が可能で、実験ではドローンの撃墜にも成功している

――でも現在、レーザー兵器が続々と採用中ですよね?

照井 ここ数年、ドローン兵器の急速な技術進歩により、その撃墜用としてレーザー兵器が再注目されたのです。そして艦載、地上用、小型の車載用などがアメリカやイスラエルで採用されるようになりました。

スターウォーズ計画は消滅しましたが、それに参加していたアメリカ海軍と空軍、そこへ兵器を納入していたロッキード マーティン社やボーイング社がレーザー技術の研究を続けていたのです。なのでレーザー技術に関してはアメリカが先進国です。

――で、レーザー兵器は音も光も発せず、命中率も現存兵器で最強レベル。これはエンタメだけじゃなく現実でも超兵器なのでは?

照井 ただしレーザー兵器は威力が小さいんです。砲弾のように打撃力や爆発力で標的を破壊するのではなく、標的の外装の一部を熱で焼き、内部の半導体を破壊して無力化する程度。現状では、こぶし大ほどの迫撃砲弾や、発泡スチロール製の小型ドローンぐらいの標的でないと有効利用できません。

アメリカ海軍はミサイルのような頑丈な外装も破壊できる威力のレーザー兵器を開発しましたが、連続して飛来するミサイルに対応するのはまだ難しいです。

――威力が小さい理由は?

照井 電力です。そもそもスターウォーズ計画のレーザー兵器は【核爆発のエネルギーを利用した発電】を研究をするほど電力を必要としました。現在のイージス艦でも、連続するミサイル攻撃に対しては全機関を停止して電力をレーザー兵器へ集中させる必要があり、まだ課題も多いです。

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イスラエル国防省は航空機搭載型のレーザー兵器で飛行中のドローンの撃墜実験に成功。アメリカ空軍も航空機搭載型のレーザー兵器の採用を開始した

――ちなみにドローンの破壊には、それほど電力を使用しないんですか?

照井 はい。一般的なEVを走行させるぐらいの電力で十分です。基本、ドローンの外装は発泡スチロール製で簡単に溶け、内部の半導体も熱で無力化できます。なので車載型のレーザー兵器でもドローンの撃墜には有効です。

また、操作も簡単で、視線入力でターゲットをロックオンして自動射撃します。それもあって、ここ1年ぐらいで【ドローン対策にはレーザー兵器が最適】という認識になっています。

――この進化の勢いだと、SFエンタメの大定番であるレーザーガンなんかも実現できるのでは?

照井 中国が数年前にライフル型のレーザー銃を発表しましたが、これは60年代に研究されていた、レーザーの光線で視力を奪うコンセプトに近い兵器でした。まだまだ人間が、EVを走行させるような大型バッテリーを携帯するのは実用的ではありません。

アメリカ空軍が使用中のハンドガン型のレーザー。こちらは直接攻撃するのではなく、ミサイルを誘導するレーザー照準器。現状ではこれがある意味、最も強力なレーザー兵器ともいえる

――その一方、アメリカ空軍が「レーザーガン」なるものを採用しているそうですが、これはどんな超兵器ですか?

照井 直接攻撃を行なうのではなく、レーザーの光線で標的を指定し、そこへミサイルが弾着する誘導装置です。敵地へ潜行した特殊部隊が使用することが多く、例えば3km先のターゲットにレーザーガンを照射すれば、十数秒でそこにミサイルが弾着します。

このように現在最も軍事的に利用されているレーザーの技術は【照準と誘導】で、ある意味、このレーザーガンが最も強力なレーザー兵器といえますね。しかし、ドローンに対してレーザーが最も有効とされ始めたので、より強力な兵器が間違いなく登場するでしょう。ただし、SFエンタメのように着色されたレーザー兵器はありえませんッ!

――現在のレーザー兵器が一般レベルで認識されると、エンタメから着色レーザー演出が消滅するかも!? これは、ちょっと寂しいかと!

写真/アメリカ海軍、アメリカ空軍、イスラエル国防省、Boeing、Lockheed Martin

取材・文/直井裕太

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