なぜ欧米や日本は中国やロシアに振り回されるのか?

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『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、"グローバル化という名の独裁国依存"について語る。

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僕はアナログシンセサイザーという楽器を好んで使うのですが、その奥深き世界をYouTubeで解説している量子力学の研究者がいます。

"ゼロイチ"のデジタルとは違う原理と構造、それゆえにちょっとした電圧の変化などで起きる予測不能な「カオス」が生み出す音。――そんな解説を聞いていると、今世界のあちこちで起きている事象とつなげて考えてしまう自分がいます。

ウクライナとの国境付近に10万人規模の軍を張りつけて威嚇するロシア、新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港での弾圧をよそに"平和の祭典"として北京冬季五輪を開催する中国、年明けからミサイル発射実験をハイペースで繰り返す北朝鮮......。独裁国の振る舞いに、世界中が敏感に振り回されています。

独裁国の意思決定がほぼブラックボックスなのとは対照的に、民主主義とは日々の議論、そして有権者の投票で政権や重要政策が選択される仕組みです。そう考えると、投票行動によって独裁国への依存度を低減することも可能なはずですが、実際には冷戦終結後、"グローバル化という名の独裁国依存"がずるずると進んだ。

先進諸国にとっては安価で資源や労働力が手に入る半面、国内で格差拡大、ギグワーカー化、セーフティネットの消耗が進むという取引でした。さらに、独裁国、新興国、最貧国、先進国を問わず、温暖化や海面上昇、エネルギー不足、食糧不足などのリスクにさらされるという結果も生んでいます。

こうした諸問題を解決するには、これまでとは異なる長期的な視座が必要ですが、民主主義の選挙のサイクルは短く、また有権者は"瞬間風速"に弱い。

例えばコロナ禍で「サプライチェーンに遅れが生じて物価が上がった」「電気代が高騰した」といったイシューが起きると、えてして「値段を下げる候補」が勝つ傾向にあり、「思いどおりにならない世界に正面から向き合おう」と呼びかける候補が大勝負に勝ったという話は聞いたことがありません。

一方、倒れるまで続く独裁政権は利己的な意味で"長期の備え"ができる。その結果、民主主義陣営の「決断のできなさ」が、「即断できる」独裁体制を支え続ける――そんな構図があると思うのです。

「中国は経済発展とともにいずれ民主化する」「旧植民地は先進国からの下請けで雇用が成り立っている」といったロジックは、今思えば、先進諸国が自らの振る舞いを正当化するために生み出してきた詭弁(きべん)にほかなりません。

地球環境、格差、人権といった課題は国際的な取り組みでしか解決できず、20世紀のように「国境の外に問題を隔離する」政策は成り立たない。冒頭のシンセサイザーの例になぞらえるならば、グローバル社会そのものに不確実性、カオスの種が内包されており、その影響は隅々まで及ぶのです。

そして、全地球的な課題に対して市民が意思表示をできるのは民主主義の先進国に限られる。だからこそ投票行動も、日々の便利さの裏にある"からくり"を意識しながら買い物をすることも重要なのです。

最終的には貧困な国の労働者の賃金が先進国に追いつき、クオリティ・オブ・ライフが改善されるという目標(ゴール)を設定するのが、リベラルを名乗る人々のあるべき姿でしょう。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。NHK大河ドラマ『青天を衝け』に続き、TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演でも話題に!

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