韓国の新大統領の登場は日韓の経済関係再構築の大チャンスだ!

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、日韓の関係改善には安全保障ではなく、経済協力から始めて本格的和解への道につなげるべきと指摘する。

(この記事は、3月19日発売の『週刊プレイボーイ14号』に掲載されたものです)

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日本との関係改善に意欲を燃やす尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が次期韓国大統領に当選したことから、冷え込んだ日韓関係が大きく改善するとの期待感が語られている。

尹氏は選挙戦で「未来志向の日韓関係の構築」を掲げ、慰安婦や徴用工問題などの包括的解決や、日韓両国のトップが年1回相互訪問して課題を話し合う「シャトル外交」復活などを公約にした。当選後の各国首脳との電話会談でも中国の習近平主席より岸田文雄首相を優先して、日本重視の姿勢を示している。

GDPで日本は世界3位、韓国は10位だ。東アジアのキープレイヤーである日韓がいつまでも角突き合わせていては、この地域の繁栄はおぼつかない。大統領交代をきっかけに悪化した日韓関係が修復に向かうなら、これ以上にめでたいことはない。

ただ、懸念もある。それは次期大統領の安全保障観だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権は米国一辺倒の日本と異なり、米中との間でバランスを取る外交を展開した。しかし、尹氏はこの路線を否定して米日との経済・安保関係のみを重視し、中国との関係を軽視するかのような発言を繰り返してきた。

公約どおり、米軍の「サード(高高度防衛ミサイル)」の追加配備や「クアッド(日米豪印4ヵ国戦略対話)」への接近などに突き進めば、韓中関係は一気に悪化し、日本もそれに巻き込まれかねない。

私は、日韓関係改善の際に最も優先すべきテーマは、安全保障ではなく経済関係だと考えている。なぜなら、中国に対抗するのに最も重要なのは日韓が経済的基盤を強化することだからだ。それがなければ、どんなに軍備を増強しても必ず負ける。

また、経済協力なら中国も「中国封じ込め」と反発はしないはず。日韓のサプライチェーンは中国ともつながるので、中国経済にもプラスだからだ。

そして、日韓の経済協力復活のシンボルとしてやるべきは、日本が2019年に実施した対韓輸出規制の撤廃だ。この規制は、むしろ日本側にダメージを与えてしまった。フッ化水素などの輸出が難しくなった日本企業の売り上げ減や世界シェア縮小をもたらしたのである。

もともと、規制の名目は「適正な輸出管理」だったが、その後韓国は適正化のための是正措置を講じている。それを日本政府が評価して規制を解除したと発表すれば、日本企業にも利益があり、韓国も評価するだろう。

日韓の協力は双方に大きな利益をもたらす。半導体では、世界最先端のサムスンと日本の素材や製造装置メーカーの連携で世界最強タッグができる。

EV(電気自動車)や再生可能エネルギー分野では、両国とも基盤技術を持ちながら世界に後れを取った。モーターやバッテリーなど両国の強みを生かしてバリューチェーンを構築すれば、巻き返しも可能となる。

日本が先にアクションを起こせば韓国も動きやすい。経済協力による成果をテコに両国の懸案となっているGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の継続、あるいは徴用工判決による日本企業の資産現金化の凍結などで、韓国側の現実的な妥協案も出てくるだろう。

歴史認識や徴用工問題などで両国がいきなり和解するのは困難だが、中国を完全な敵国扱いするような性急な安保協力も危険だ。急がば回れ。経済協力から始めて本格的和解への道につなげるべきだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

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