「サイバー警察局」のトップは"若い才能"に任せるべきだ!

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、DX(デジタルトランスフォーメーション)やITに詳しく、気力、体力とも充実した若いハイテク人材をトップに据えることができない日本の未来は不安だと語る。

(この記事は、4月11日発売の『週刊プレイボーイ17号』に掲載されたものです)

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警察庁がサイバー犯罪対策の強化を目的とした「サイバー警察局」と「サイバー特別捜査隊」を発足させたのは4月1日。サイバー事案は海外の犯罪グループが関与することが多く、都道府県警による捜査では限界があったが、今後は警察庁下のふたつの新組織が外国の捜査機関と連携して対処することになる。この動き自体は大歓迎だ。

ただ、4月1日の発足式で二之湯智国家公安委員長が挨拶(あいさつ)するのを見て、私は大きな不安を覚えてしまった。

国会公安委員長は警察全体を指導・監督する同委員会のトップだ。77歳と高齢の二之湯氏は、岸田派最長老議員のひとりだが、入閣前は政界での存在感は薄かった。ところが最近、ふたつの話で有名になった。

まず昨年の組閣で公安委員長に起用されたとき、岸田首相の温情による「思い出入閣」と揶揄されたのだが、二之湯氏は入閣後のインタビューで「政治家のゴールとして、ポストを与えてもらい感謝している」と答えて失笑を買った。

サイバー犯罪に立ち向かうために、時代の最先端を行くことが求められるサイバー警察局の門出を飾るには、あまりに不似合いなトップではないか。

さらに先月には、二之湯氏が地元の京都府連会長時代に府連が国政選挙の候補者から集めた資金を府議会議員らに配ったとされる買収疑惑で告発され、国会でも追及を受けている。サイバー対策どころか、およそ警察の指揮を執る人物としての適格性すら疑われているのだ。

サイバー戦争のフィールドでは若い有能な人材が活躍している。ウクライナで対ロシアの「デジタル戦」を指揮しているのはデジタル大臣であるミハイロ・フョードロフ氏だ。オンライン広告会社を起業したITの専門家で、現在31歳。彼の行動力は驚異的だ。

ロシアによるウクライナのインターネット遮断の動きに対し、宇宙開発企業「スペースX」を率いるイーロン・マスク氏に同社の衛星インターネット接続サービス「スターリンク」の提供を要請、わずか10時間後には協力を取りつけた。これにより、ウクライナ軍はロシア軍の位置情報を偵察用ドローンなどで継続的に入手することが可能になったという。

ほかにも彼はアップルやグーグルなどのグローバル企業に、SNSでロシア国内での事業活動の自粛を求め、同意を取りつけた。若きデジタル大臣の国境を越えた「デジタル戦」が、プーチン・ロシアを悩ませているのは間違いない。

ちなみに、サイバー戦とは分野が違うが、台湾のオードリー・タン氏がデジタル大臣に就任したのは35歳のときだった。

一方、高齢の二之湯氏の下でサイバー警察局を指揮する河原淳平局長は、警察庁のサイバーセキュリティ・情報化審議官などでキャリアを積んだサイバー犯罪のプロだとはいうが、58歳。若ければいいというわけでもないが、前出のふたりのような活躍はとうてい期待できないだろう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)やITに詳しく、気力、体力とも充実した若いハイテク人材をトップに据えることができない日本。デジタル庁長官に73歳の石倉洋子氏が就いたのに続き、「サイバー警察局」の発足式で引退間際の二之湯国家公安委員長が挨拶文を棒読みする姿を見れば、デジタル後進国日本の未来はますます暗いとしか言いようがない。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

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