米・英の"ロシアゲート疑惑"は人ごとではない。緊急警告・日本の「国民投票法」は規制が緩すぎる!【前編】

米・英の"ロシアゲート疑惑"は人ごとではない。緊急警告・日本の「国民投票法」は規制が緩すぎる!【前編】

英国「2015年欧州連合国民投票法」と日本「国民投票法」の比較

イギリスがEU離脱を決めた2016年の国民投票に「ロシアが介入していた」疑惑が持ち上がっている。

これは日本にとって人ごとではない。安倍政権は2020年の憲法改正を目指しているが、改憲を決する国民投票のルールが驚くほど"規制ユルユル"だからだ――。

■英国版ロシアゲート疑惑

2016年6月に行なわれた国民投票で「EU離脱」を決めたイギリス。それから2年以上を経た今も、この問題をめぐるイギリス社会の分断は深まり続けている。

先日、ようやく英国とEUの間で離脱に関する合意案がまとまったものの、メイ首相の合意案に不満を抱く離脱派からは強い反発が出ており、6人もの閣僚が辞任。

与党・保守党からも首相に対する不信任の声が上がるなど政界は大混乱で、最終的な離脱期限が来年3月に迫るなか、「EUとの合意なき離脱」という最悪の事態に陥る可能性も囁(ささや)かれている。

その英国で今、16年の国民投票に関する重大な疑惑が浮上している。"英国版ロシアゲート"疑惑だ。

トランプ政権が誕生した16年の米大統領選挙で、ロシア政府がトランプを勝たせるためにサイバー攻撃やフェイクニュースを使って世論操作したといわれる"ロシアゲート"と同様、英国の国民投票にも、巨額のロシアンマネーが不正な形で離脱派に流れていたのではないか、というのだ。

この疑惑で英国の選挙管理委員会(選管)や警察当局の捜査を受けているのがEU離脱派の団体"Leave(リーブ).EU"の共同設立者で、実業家のアロン・バンクス氏だ。

英紙『ザ・ガーディアン』の東京特派員、ジャスティン・マッカリー氏が解説する。

「選管の資料によると、16年の国民投票でEU離脱派は総額1580万ポンド(約22億円)もの寄付を受けています。そのうち、960万ポンドを寄付したのが"離脱派最大のスポンサー"といわれるバンクス氏です。

そのうちの800万ポンドの出所について虚偽の届け出をした、つまり本当の資金源はバンクス氏ではないとの疑いがあるとして、警察が捜査を進めています。しかも、この800万ポンドは英国のタックスヘイブン(租税回避地)であるマン島に登記された会社を経由して彼に提供されており、その『本当の出資者』はロシアなのではないかとみられているのです」

バンクス氏は疑惑を否定しており、警察当局の捜査も進行中のため、現時点でこれが事実だとは断言できない。しかし、仮にこれが事実だとすれば、ロシアは米国のトランプ政権誕生と英国のEU離脱を陰から支援することによって、アメリカとイギリスの国内に深刻な分断と混乱をもたらしたことになる。

■日本の国民投票法は驚くほどユルユル!

このニュースは日本にとって人ごとではない。安倍政権が目指す「憲法改正」の是非を問う「国民投票」で、その基本ルールとなる「国民投票法」が、英国の制度と比べて驚くほど不用心だからだ。

「英国版ロシアゲート疑惑には大変驚いています。なぜなら、英国の国民投票制度は日本が参考にすべきモデルだと考えていたからです。英国に比べてはるかに規制の緩い日本の国民投票法の下で、憲法改正の是非を問う国民投票が行なわれたら、いったい何が起きうるのか......想像するだけでも恐ろしい」

そう語るのは、国民投票制度に詳しく、『広告が憲法を殺す日』(本間龍氏と共著、集英社新書)などの著書がある、シンクタンク「国民投票広報機構」代表の南部義典(なんぶ・よしのり)氏だ。

「英国の国民投票では、離脱派、残留派の双方とも、キャンペーンで一定額以上の支出を行なうすべての団体は選管に登録する必要がありました。

また、国民投票運動の期間中、これらの登録団体がキャンペーンのために支出できる金額には『限度額』が定められており、国民投票の終了後に選管に収支報告書を提出する義務もある。その内容は一般にも公開され、当然、外国からの資金提供も禁じられています。

一方、2007年に自民・公明案と当時の民主党案を一本化する形で制定された日本の国民投票法は、『憲法改正をめぐる国民の議論は自由闊達(かったつ)なものにしたい』という民主党の意向から『表現の自由』を尊重し、規制を最小限にとどめる方針で作られました。

そのため、運動団体の登録は必要なく、外国人も含めて誰でも運動を行なえます。また、キャンペーン資金の制限もなければ収支報告の義務もないので、運動資金は文字どおり使い放題!

その上、最大で6ヵ月に及ぶ運動期間中、唯一の例外である投票日前14日間の『有償テレビ・ラジオCM禁止』を除けば、基本的に広告も無制限ですから、お金さえあれば新聞広告やテレビCMがいくらでも打てるのです」

詳しくは図表(英国「2015年欧州連合国民投票法」と日本「国民投票法」の比較)を見てほしいが、英国の国民投票制度と比べて、日本のそれは規制ユルユル、まるで「門も、ドアも、鍵もない家」のようなものなのだ。


この、性善説を前提に作られたような国民投票法で、改憲が発議されたらどうなるか? 国民投票法にさまざまな規制やチェック機能を備えている英国ですら今回のような疑惑が浮上しているのだ。日本の国民投票に外国が介入するなど簡単なことだろう。

日本の憲法改正に「自国に都合のいい形で影響を与えたい」、あるいは「日本に分断をもたらしたい」と考える国が巨額のキャンペーン資金を提供して、国民投票の結果に影響を与えようとする可能性は否定できない。

そもそも運動団体の登録義務も収支報告の義務もないのだから、英国のように「後で問題が発覚」することすら不可能に近いのではないか?

★後編⇒憲法9条改正が他国に乗っ取られる? 緊急警告・日本の「国民投票法」は規制が緩すぎる!

【国民投票法とは?】
憲法96条に定められた「憲法改正の手続き」にのっとり、「国民投票」の具体的な手続きやルールを定めた法律。2007年3月に当時の与党(自民・公明)と野党第一党(民主党)の提案を一本化し、同年5月に成立した。憲法改正案が国会の衆参両院で3分の2以上の賛成を得て「改憲の発議」が行なわれると、60〜180日以内に18歳以上の有権者による「国民投票」が行なわれ、過半数が賛成すれば憲法改正が承認される

取材・文/川喜田研

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