最新鋭のステルス戦闘機F−35Aはなぜ墜落したのか?

最新鋭のステルス戦闘機F−35Aはなぜ墜落したのか?

艦載型(F−35B)の墜落はあったものの、F−35Aの墜落事故は今回が世界初

4月9日午後7時頃、航空自衛隊三沢基地(青森県)の第302飛行隊に所属する4機のステルス戦闘機F−35Aが、夜間戦闘訓練のため離陸。約25分後、同基地の東約135kmの太平洋上で1機の機影がレーダーから消え、連絡が途絶えた。同日深夜、左右尾翼の一部が海上で発見され、防衛省は墜落と断定した。

墜落した機体は、日本の三菱重工業で組み立てられた国内製造の初号機。空自で運用され始めてから1年が経過しており、不具合があればその間に指摘・修正されていたはずだ。パイロットの細見彰里3等空佐(41歳)は通算飛行時間3200時間のベテランで、緊急脱出を試みた形跡はなく、本稿締め切り時点では行方不明のままだ。

元空自第16代302飛行隊隊長(当時は那覇基地所属)の杉山政樹氏はこう語る。

「今年3月26日、三沢基地で行なわれた新生302飛行隊の編成式に出ました。これからの日本を背負う優秀な部隊で、今回の事故にはいろいろな思いがあります」

墜落事故の原因はいったいなんだったのか。

「エンジントラブルならば、パイロットが緊急脱出する時間的余裕があるはずです。また、コンピューター制御系統に問題が生じた可能性も低い。F−35は全世界で延べ20万時間飛行していますが、そのような事故はありません。

報道によれば、墜落機から『ノック・イット・オフ(訓練中止)』と報告が来た直後、無線が不通になったようです。この言葉は『いったん訓練やめ』といったニュアンスで、すべての訓練中止という意味ではない。パイロットが本当に具体的な危機を感じていたならば、『アンコントロール(制御不能)』『ファイヤ(エンジン火災)』、あるいは『○○が悪い』とコールしていたはずです」(杉山氏)

世界各国でF−35を撮影しているフォトジャーナリストの柿谷哲也氏もこう言う。

「イスラエル空軍はF−35Aを3年間運用し、実戦にも投入していますが、墜落は一度もない。ソフトウエアが原因とは考えられません。今回の事故から24時間以上経過しても、米空軍やロッキード・マーティン社から飛行停止指示が出ていないことも、機体関連のトラブルではないことを裏づけていると思います」

となると、残る可能性は人的な問題――つまり、パイロットのミスということになる。前出の杉山氏はこう分析する。

「今回の訓練は2対2の戦闘訓練でしたが、2機ずつの編隊飛行ではなく、それぞれ単機で行動していたはずです。最新鋭のヘルメットに搭載されたディスプレイに、戦闘空域の3D映像を映し出すことができるF−35は、要撃任務を単機でこなせるからです。

従来であれば戦闘機を2機編隊で運用する場合、時々僚機を目視確認するタイミングで自機の位置や高度を把握できます。しかしF−35は単機行動、しかも今回は夜間ですから、頭をコックピットの中に突っ込み、映像を凝視して一点集中してしまったのかもしれません。

そうしてフライトがおろそかになり、かつ高度を失うと警報が鳴るシステムをオンにしていなければ、例えば機体を90度傾けて旋回する際、気がつかないうちに急降下した可能性は考えられます。要撃訓練は高度1万フィート(約3000m)以上で行ないますが、あの速度ならほんの数秒で海に落ちてしまいます」

機体が90度傾くような急旋回中の姿勢のまま墜落した場合、海面に落ちた際の衝撃で垂直尾翼だけが折れるというのは十分に考えられる話だ。これは現段階で尾翼だけが回収されているという事実とも符合する。

空自ではF−4ファントム約50機が来年に全機退役し、近い将来にはF−15も100機退役する。その後の防空を一手に担うF−35の墜落。原因究明が待たれる。

取材・文/小峯隆生 写真/時事通信社

関連記事(外部サイト)