年金問題を参院選の争点にしてはいけない! 古賀茂明が年金の未来のために野党に求めること

年金問題を参院選の争点にしてはいけない! 古賀茂明が年金の未来のために野党に求めること

「批判合戦、バラマキ合戦からは、年金の未来について真に意味のある話し合いは生まれない」と語る古賀茂明氏

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、年金問題を参院選の争点にする動きに異を唱える。

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年金問題が参院選の争点に急浮上している。金融庁の"老後2000万円不足"報告書(*)の受け取りを拒否した麻生太郎財務相など、政府・与党の対応に野党が反発し、参院選の争点にする動きを強めているためだ。

年金会計は多額の「含み債務」を抱えている。仮に現在、年金の受給資格がある国民に将来にわたって年金を給付し続ける場合、約800兆円が不足するという試算もある。

それだけに、どうすれば年金制度を維持できるのか、与野党が国会で議論することに異論はない。だが、参院選の争点にすることには反対だ。 

800兆円もの財源が不足しているだけに、年金改革はどうあってもバラ色にはならない。だから、選挙の争点にしてしまうと、政党はその厳しい現実を国民に正直に話すと票が減ると恐れ、甘い改革案やバラマキ策をぶち上げる。そうなれば、目先はよくても、長期的には年金財政はさらに悪化する。

今、野党がすべきは年金制度を検証し、独自の改革プランを提案することだ。そして政府のプランと比較し、どうすれば本当に持続可能な年金制度になるのか、与党と議論するのだ。

ただし、その場は参院選ではない。年金改革のための論議は党利党略や選挙戦略とは切り離し、国民に耳の痛い話もきちんと伝えられるよう、参院選後の静かな環境で与野党が冷静に論議することが望ましい。

こう言うと、野党にそんな力量はないと冷笑する声が上がるかもしれない。しかし、過去の野党は独自に年金改革プランを作り、与党に対案として示していた。経産省で経済産業政策課長をしていた当時、私はその現場をこの目で見ている。

自公政権が(1)保険料は18.3%を上限に2017年まで段階的に引き上げる、(2)年金額は現役世代の手取り収入の50%を確保する、などの内容を骨子とする改正年金法を成立させ、「年金100年安心プラン」というキャッチフレーズを喧伝(けんでん)したのは04年のことだった。

しかし、産業政策課長として日本経済の動向を見守っていた私は、このプランの基となった厚労省の検証データに疑問を抱いていた。総じて甘めの予測が多かったのだ。

そこで、いやがる厚労省から検証データと基になる経済モデルを取り寄せ、産業政策課で独自に年金財政を試算したところ、とても"100年安心"とはいえない厳しい結果となった。

ただ、この試算が日の目を見ることはなかった。自民党幹部が、経産省に公表しないよう圧力をかけてきたのだ。

すると、その経産省試算をよこせと言ってきた人物がいた。当時、民主党の衆院議員だった故・仙谷由人(せんごく・よしと)元官房長官である。

その後、試算を参考に民主党内で議論を重ね、8つのオプションを持つ野党の年金改革案を完成させた。

そして09年に政権は民主党に交代したが、この改革案は12年の与党・民主党、野党・自民党、公明党の3党による「社会保障と税の一体改革」の合意にも少なからず影響を与えた。

この経緯を野党は思い出してほしい。再び独自の年金改革案を磨いて与党に示せ。そして、自公は逃げずにその対案を受け、国会で堂々と議論をすべきだ。批判合戦、バラマキ合戦からは、年金の未来について真に意味のある話し合いは生まれない。

(*)報告書の正式名称は「高齢社会における資産形成・管理」

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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