「ダメな政治リーダー」と「機能が劣化した官僚」という新型コロナ禍の日本の悲劇

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、新型コロナ禍における日本のリーダーや官僚の対応に危機感を募らせる。

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3月29日、西村康稔(やすとし)・経済再生担当相は「国立国際医療研究センター」視察というパフォーマンスを行なった。しかし、彼が重症患者用の人工呼吸器について「増産に向けて調整している」と語るのを聞き、私はあきれてしまった。

今世界では、人工呼吸器の争奪戦が起きている。日本企業も海外からの注文殺到でフル生産状態。そんな時に政府が要請しても、来月に何万台増産という数字を出すのは難しい。そこで、とりあえず「増産に向けて調整」という曖昧な発言で、"やってる感"の演出を試みたが、対策の遅れを目立たせただけだった。

アメリカ、ドイツ、フランスは、それぞれ大手自動車メーカーに政府が人工呼吸器製造を要請または命令している。ドイツ、韓国ではマスク、ロシア、インドでは人工呼吸器が「輸出禁止」だ。日本の対応は遅すぎる。

一方、小池百合子都知事は、2020年東京五輪の延期が決まった直後の3月25日から記者会見を頻繁に開き、「ロックダウン(都市封鎖)」や「オーバーシュート(爆発的な患者の急増)」などの横文字乱発で都民の不安を煽(あお)った。

しかし、感染者専用のベッド4000床を確保するとぶち上げておきながら、東京都がこれまでに確保できたのは感染者1000名超に対して1000床のみ(4月5日時点)、7日からは都内のホテルを借り上げ、軽症者を移動させる方針だというが、現場は日々、感染者を収容する病院を探す自転車操業状態だ。

今すぐにでも、軽症者用の収容施設を設置して、症状別の収容をしないと重症患者の治療ができなくなり、「医療崩壊」が起きてしまう。

今年7月に都知事選を控えている小池都知事は五輪フィーバーで再選というシナリオを描いていた。五輪1年延期でそのシナリオが崩壊したが、その間コロナ対策は手つかずで後手に回ってしまった。それに気づいた彼女はパニックに陥ったはず。

霞が関では「小池都知事は自己PR術"だけ"は天才的」と評判だ。今回も、大げさに危機を煽ってTV露出を増やし、他方で緊急事態宣言は国が決めるとして政府に責任を押し付けた。

感染拡大した時に「ほらね、だから政府に言っておいたのに」と、責任転嫁するたくらみだろう。五輪に代わり新型コロナ対策を再選キャンペーンに使おうという思惑があまりにも露骨だ。

今、世界各地で実施されるロックダウンでは、外出禁止違反などに刑事罰が科されるが、日本の「緊急事態宣言」による都市封鎖には強制力はない。一方、医療施設の設置や医療用機器設備の確保には強制措置を取ることができることから一刻も早く発動しなければならなかった。

しかし、安倍首相は4月7日になって、やっと緊急事態宣言を出した。やはり、遅すぎると言わざるを得ない。

もうひとつ大きな問題がある。官僚機構がその機能を果たしていないのだ。他国の例を見て、お得意の"丸パクリ"で複数の選択肢を政治家に提案するべきだが、「忖度(そんたく)官僚」だらけの彼らは、五輪延期決定まで、無為に指示待ちしていた。

パフォーマンスだけで決断できず、責任をとれない国と首都の政治リーダー。機能が著しく劣化した官僚組織。これで新型コロナ感染拡大の"国難"に立ち向かえば、尋常ならざる国民の犠牲が不可避となる。それが杞憂であればいいのだが。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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